珍しい上に、なかなか唸らせる出来栄えの楽茶碗が入りました。




楽吉左右衛門 惺入 空中作写寒月茶盌 歌銘写書 書付 淡々斎


本阿弥空中作の有名なお茶盌の写しです。



本阿弥光甫

江戸前期の工芸家。本阿弥光悦の孫。父は光瑳。号は空中斎。家職である刀剣の鑑定に優れ、光悦の遺風を継ぎ茶道・書画・陶芸・彫刻をよくした。楽焼のほか信楽焼を得意とし、空中信楽と称された。本阿弥家の家記である『本阿弥行状記』を編集。天和2年(1682)歿、82才。


その血筋や家からか、作行きにもどこか刀剣の鮮やかな造形が感じられます。







大樋長左衛門による寒月写しも人気ですが、樂による作品はかなりの希少さです。



高台側より

箆使いの鮮やかさやシャープな切り口もなかなか、見所です。






外箱 甲側



外箱 内側 淡々斎



内箱



歌銘写し 本歌にも添えられている歌です。


山の端は それとも

見えずうづもれて

雪にかたぶく

有明の月


出典 源通氏(続拾遺)





楽惺入 明治20年(1887)~昭和19年(1944)

大正8年(1919)32歳で十三代吉左衞門を襲名。

戦争が続く時代背景の中、書画、和歌、漢学、謡曲などに通じ、茶道文化の啓蒙に尽力。

惺入自身の真面目な性格がそのまま現れているような作風で、伝統的な技法の再現と様々な鉱石を採取して釉薬に使用し研究にも熱心でした。