『漆芸王国』とよばれ・・・数々の名工を輩出してきました讃岐の国。

象谷を筆頭に・・・江戸期の鞘細工やキンマの技術と唐物の技法を融合させ、独自の世界を展開してきました。

近代になり、その讃岐漆芸をクラシカルな伝統的なものからモダンなアートへと昇華させたのが『音丸耕堂』です。

今回ご紹介の作品は、耕堂らしさを包括しながらも茶道に於ける香合としての使い方にも適う優品です。





【音丸耕堂 堆漆 亀香合】


幅 5.9㎝ 高さ 3㎝

昭和時代






かわい恰好いい香合です。


伝統的な独楽文様をベースに『亀』、をモチーフに作り上げた作品です。

亀・・・見えますでしょうか?


頭、と尻尾が見えます?






『彫漆(ちょうしつ)』

表面に漆を幾重にも塗り重ねて層を作り、その上から模様を彫るというものです。

幕末の讃岐漆芸の祖といわれます、『玉楮象谷』が中国の技法を研究し・・・讃岐漆芸の技法として確立したものです。

音丸耕堂は、1955年(昭和30)には「彫漆」技法で重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。





朱、黒、黄、緑、褐色の五色を元に構成され、新しい素材も加えて難しい中間色や鮮明な色漆を駆使し、漆による色彩の表現領域を格段と広げることで、斬新なデザインを可能としているのです。


一番外側の「茶色」だけを良く見ると・・・7~10層で構成されております。

その層により、木の年輪のような模様になっており・・・周りの色漆との対比の要因もあって、茶色なのに「紫色」にも感じさせるのです!





側面も73層はあります。

しかし!それは色分けだけの層であり、一色の層がさらに何層もの漆の積み上げにて作り上げているのです。



内側も見事なものです。



底の銘です。




共箱   「堆漆亀香合」




共箱   「於蓬莱草舎 音丸雄」




仕舞用の仕覆も添います。




2重箱となっております。



耕堂は、1898年(明治31)に高松に生まれました。

1910年(明治43)讃岐漆芸サロンである百花園の職長格であった、石井磬堂の内弟子として修業、1914年頃独立し、この頃独学で玉楮象谷の彫漆作品を研究しました。

1921年(大正10)に彫金家の大須賀喬おおすがたかしらと香風会こうふうかいを結成し展覧会を開催するなど、漆芸作家として精力的に活動。

1932年(昭和7)に第13回帝展に初入選後、入選を繰り返し、1942年(昭和17)第5回新文展で《彫漆月之花手箱》(高松市美術館蔵)が特選となりました。

1955年(昭和30)重要無形文化財保持者(彫漆)に認定され、また同年に日本工芸会の創立に参加するなど、日本の工芸界に多大な影響を与えた作家として知られております。





この亀の香合は、耕堂も得意としたものであったようで、色違いのバリエーションも存在致します。

今回の香合は、後年での高さも造形も大きく、迫力がありすぎるタイプではなく、ほどよいバランスが取られており、茶道具の精神も感じられて良いのです。。。


亀の香合といえば、藤田男爵が臨終の床にて最後まで熱望したという、伝説の「大亀」の香合が知られます。

それは黄交趾に紫や緑をあしらったものですが・・・意匠と色彩がこの香合に非常に通じるところを感じるのです。

※御成約済みです。


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