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【河井寛次郎 倣元瓷葱翠青茶盞  鐘渓窯】 [近代工芸]

新年1発目、酒器シリーズのご紹介のラストを飾るのは・・・・

『河井寛次郎』、です。


寛次郎と云えば、後期の『筒描き』と呼ばれるダイナミックな作風が有名ですが、個人的には初期の中国テイストからの、個性としては淡いながらも品格を感じさせる作品群に惹かれます。

昨年後半、およそ30年ぶり?に『河井寛次郎記念館』へ寄ってみました。


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観光客で溢れる・・・五条坂から少しだけ、南の方の閑静な住宅街に佇んでおります。

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中は、生活感を残したままのアトリエ・・・工房が遺されており、ポスターやキャプション、結界などが無ければタイムスリップしたような感じになるのです。

『市中の山居』ともいえる、この場所で寛次郎は製作活動をしており、『喧噪』と『静寂』が交差する空気感の中での時の流れは・・・また格別であったのだろうと推測します。

概ね、人が置かれております環境というのは、どちらかに偏っているものですから。



大正時代。


横浜の地では『眞葛窯』では、初代がその寿命を終えようとしつつある頃です。

京都の方も近代化が進んでおりましたが、ハイカラな横浜とは違ってまだまだ日本的ではああったようです。

当時の空気感、を画像をお借りしてご覧いただきましょう。


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大正2年、四条大橋開通。

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南座の辺りでしょうか?


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さて、この頃の寛次郎は・・・


大正9(1920)年 京都五条坂で制作活動を開始します。

『鐘渓窯』という窯名にて、 中国や韓国の古陶磁をモチーフにした作品群を生み出しました。

そして、2年後には早くも東京での高島屋にて個展が開かれ、あっという間に有名になっていくのです。

この頃の作品の魅力、は『造形力』よりも『釉薬』の美しさに比重が高いように思われます。


用の美、意識しないものこそ美、という禅問答のような『民藝』運動よりも、もっと純粋な気もするのです。


そんな私が、スッと・・入ってくるように気になった作品がこちらです。


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【河井寛次郎 倣元瓷葱翠青茶盞  鐘渓窯】


幅    12cm

高さ   3.9cm

高台径  3.5cm

製作年代 大正期

共箱




名前のように、『元時代』の磁器作品をモチーフに・・・


『葱翠青』(そうすいせい)


青々とした青! ととにかく青ということです。(^^;


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蛍光灯1灯のみですので、この色ですが・・当てる光量や色目によって、『怪しく』も『艶やか』にも、変幻する不思議な釉薬です。

口周りにはうっすらとした紫も発色しております。


のぞき込むと、まるで恒星に吸い込まれるような感じになります。


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青磁作品と同様に、高台周りの土見せの外周に釉薬をぴったり止めて掛けております。

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『鍾渓窯』印


のちに、作品には銘を入れなくなる『寛次郎』ですが、この頃は中国の陶磁器と混在しないように、との思いから敢えて『窯印』を入れていたようです。

そこは、自身の名前ではなく『窯名』であったというところに自身の性格が出ているように感じるのです。後年、人間国宝認定も辞されておりますことからもうかがえます。


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黒田陶苑様の旧蔵です。

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共箱も状態良し、です。


河井寛次郎は大正末頃から、 スリップウエアに感激したことから作風が変化し、柳宗悦・濱田庄司らと民芸運動を起こし、中期作品へと移行していくのです。
  

寛次郎 鐘渓窯茶碗 (4)-1.jpg


『茶盞』(ちゃわん)と記されておりますが、それはあくまで形状としての分類上であり、この作品はやはり、使うなら『酒飲』であり、純粋に『色』を愉しむ為のアイテムであるのです。


使う為に作る作品、『道具』には『用の美』が宿り、思わぬ魅力が発生することがあります。

使うことを想定しない、モノにはそれはそれで純粋に追及することでしか生まれない『美』、というのがあるのも事実です。


どちらが正解、というのでは有りません。


愉しかったら、良いのでしょう☆


※売却済みです。

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