香山の香合の逸品のご紹介です。






【初代 眞葛香山 仁清意鴫 香合】


幅      5.5cm

高さ     8cm

製作年代   大正5年頃

箱      二代筆 遺作箱




『鴫』・・・『鴨』ちゃいまんねん。字は似ております~。




こちら、ホンモノさんです。



鴫は、『わたり鳥』です。


南極以外の全ての地域に生息するようですが、旅を続けることから日本では、『春』と『秋』の鳥として知られます。


古より、歌に詠まれることも多く・・・その中で、抜粋してみますと。





「我が門のおくての引板におどろきて室の刈田に鴫ぞ立つなる」 (千載集 源兼昌)



「からころも裾野の庵の旅まくら袖より鴫の立つ心地する」 (藤原定家)



「刈あとや早稲かたがたの鴫の声」 (松尾芭蕉)



「鴫立て秋天ひききながめ哉」 (与謝蕪村)




しゅっと、立ってるイメージがありますね。

長いくちばしで、首を大きく傾けて相手に気取られないように獲物を刈るので、よけいに立ってるイメージが強くなるのでしょう。


そういう、特性なども含めて・・・デフォルメしつつ、本質をとらえながら意匠化する、というのもこれまた『作り手』の技なのです。






眞葛窯伝統の、藁灰釉による仁清調に、鉄絵により絵付けがなされております。


このような、かわいい?面白い?フォルムは『香山』らしい、と思われますが・・・実は、この香合のオリジナルは、父である『長造』なのです。





眞葛窯の創始者である『長造』の香合の型は、全てでは有りませんが『香山』に引き継がれました。

もちろん、製作される際には・・・そのままではなくアレンジは加えられます。







羽根のあたりの、やさしく丁寧な作り込みは、二代にも通じるところがあり・・・明治末~大正初期頃の茶陶は、二代の関与するところが多かったこともうかがえます。


さらに、ぐるっと回り込んでみましょう。









次は内側です。





こちらも、長造と同じく削り込みにて薄く仕上げております。

これも眞葛窯らしさ、なのです。








デジカメではピントも合わない・・・『接写』をスマートフォンを使って撮影してみました。






なんともいえない、表情と色合いです。






最初の印象ではデフォルメ感がメインであったのが、ここまで見てくると、もう『鴫』らしさとしか感じなくなってくるのです。


江戸期の日本画でも、決して花や動物は写実では有りませんでした。

有名な画家の作品に描かれるそれらは、もはやどうアレンジ・デフォルメされていてもその描かれている題材そのものにしか見えません。

ものごとの本質のどこにフォーカスして、いかに見る人へ伝えるか、というところの凝縮力・再現力というのが『モノづくり』の妙技なのです☆






大正8年の記録にも同手が記載されております。






もはや、ここまでご覧になられている皆様も、既にこの愛らしい『鳥』の『とりこ』になっていることでしょう!(メルヘンでんな~)


※ご成約済みです。

                             

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