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【初代 高橋道八 黒 茶碗】 銘『寿松』 鵬雲斎 箱 [幕末京焼]

『仁阿弥道八』、は常々ご紹介いたしておりますし、メジャーであります。

しかし・・・その、父であり陶家『高橋道八』を創始した初代につきましては、あまり語られることが少ないかもしれません。

この度、初代の中でも・・・・ハイレベルの作品が入りましたので、この機会に整理してみましょう。



初代道八 黒茶碗 (6)-1.jpg


【初代 高橋道八 黒 茶碗】


幅   12cm

高さ  7.5cm

高台径 5cm


製作年代 明和3(1766)~文化元(1804)年


箱 共箱  銘『寿松』鵬雲斎 箱




初代道八は、三重県亀山の6万石石川藩の藩士『高橋八郎太夫』の次男として生まれました。


宝暦13(1763)年、亀山から京都の粟田口へ入り・・・そこで陶業の修行を致します。


24歳のころです。


この時、のちの京焼のスターダムであります・・・・『青木木米』や『眞葛長造』、『永樂保全』はもちろんのこと・・・『了全』も未だ生まれておりません。


『後期京焼』の栄光の先駆けとなりました、『奥田潁川』ですらこの時11才です。


そして、そのわずか3年後の明和3(1766)年、粟田口にて開窯するのです!


『松風亭』『空仲』『周平』を、陶名として『道八』を名乗ります。


同時代のライバルといえば、明和8(1771)年に『初代清水六兵衛』が『海老屋清兵衛』より独立して開窯しましたので、後期京焼の中での本当に早い時期であったことがうかがえます。


その頃は、『煎茶趣味』が主流ですが、道八は比較的抹茶に関する作品の方が多いようです。


『法橋』に任じられていたようで、寺社の方の注文によると思われる土器皿の作品も確認しております。


代表的なものとしては、『黒樂』『赤樂』『南蛮写し』の3つでしょうか。


いずれも、子である『仁阿弥道八』でも引き継がれるラインナップです。

また、『呉春』の弟子『松村景文』絵付けによる作品も、親子双方に確認されております。


『煎茶』道具が五条の方が主流であったのは、やはり新興の陶工が集まり時代に即したものに対応していたのに対して、粟田口の方は御所に関係したもので旧来の格式の抹茶道具が主流であったのが関係していたのだと思われます。


さて、前置きが長くなりましたが・・・作品のご紹介を。


初代道八 黒茶碗 (6)-1.jpg


比較的、薄目に形成しております。

手びねりによる歪みがあるようで・・・それでいて全体としてとてもまとめております。


釉調もすこぶる良く、ここまでの初代作どころか・・・仁阿弥作でも、そう数が有りません。

初代道八 黒茶碗 (7)-1.jpg


口造りもとても五岳の良い感じです。




初代道八 黒茶碗 (9)-1.jpg

見込み部分は、箆で形成したのでしょうか。



この作品が造られた頃、『樂家』の方は『得入』から『了入』とわずかの間に代が変遷していた大変な時期でした。


初代道八 黒茶碗 (11)-1.jpg


高台周りを見ますと・・・なんと、ここにきて『窯変』が!


初代道八 黒茶碗 (13)-1.jpg


見事な『朱釉』と『焼貫』の調子がでております。


初代道八 黒茶碗 (12)-1.jpg


初代の『道八』押印です。


従来、亀『セ』印が初代であったという説がありましたが、近年の研究により二代(仁阿弥)との共用の可能性が出てきました。


他にも、同手作品の比較などから・・様々な共通項があり・・・初代の晩年と仁阿弥の初期は、共作によることでの色々があるように思う節があるのです。


この作品のケースでは、高台の処理からは、あきらかに子である仁阿弥との違いがはっきりします。



初代道八 黒茶碗 (1)-1.jpg


眼鏡箱の外箱に、共箱と書付箱の2つが収納されます。


初代道八 黒茶碗 (4)-1.jpg

共箱です。


仁阿弥に対して、厚めの良い桐が使われます。

初代道八 黒茶碗 (2)-1.jpg

指物師の隠し銘がありました。


作品の上がりといい、かなりの注文主であったと思われます。


初代道八 黒茶碗 (5)-1.jpg


鵬雲斎大宗匠による箱書が添います。


『寿松』


拝見の際に裏返すと、一か所に丸く赤色があります・・・鶴の頭のようにも?!




初代道八 黒茶碗 (8)-1.jpg


しかし、ここまでしっかりとした黒樂を焼けるというのはなかなかです。


粟田口では、金彩の色絵陶器や、銹絵の仁清調の器たちがが多く作られていた地域です。


初代道八がどうやって技術を会得したのか・・・


少し時代を巻き戻しまして。


初代道八が開窯した明和3(1766)年の17年後、天明3(1783)年の3月12日・・・次男が誕生します。

のちの、仁阿弥道八です。初代道八、43歳の時の子でありました。


初代は、文化元(1804)年に没します。


その時は仁阿弥道八は22歳ですので、晩年は一緒に製作に従事していたであろうと思われます。


その後、代を継承し・・五条へ移り、大いに活躍するのです。


しかし、その幕末京焼が一気に花開く直前、伝統に縛られた京都の粟田口に突如現れ、一気に名声を得た初代道八の凄さ・・というのは、まだまだこれから再評価すべきところであります☆




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【2024年5月】 新入荷情報&スケジュール [新入荷]

【2024年5月15日 新入荷 画像追加・よもやま話追記】


名古屋出張から帰った翌朝からの体調変化、その夜から16時間程寝込みまして・・・お医者さんにも行きましたが、なんとか昨日から仕事フル稼働しております。

しかし、まだ軽い咳と鼻声ではありますが[あせあせ(飛び散る汗)]

気候が良いと、時間あるだけMAXに行動してしまいがちで、頭も並行してフル稼働させておりますとたまーにこういう風邪ひきになってしまうのは昔からです。一応気を付けているつもりなのですが同じパターンです。(^^;

余裕あるなぁ・・・という程度で常に心掛けたいのですが、ついつい貧乏性なので。

ご心配おかけいたしました。励ましのメッセージ頂戴しました皆様方には御礼申し上げます。


・・・・と、いう要因の一端であろうと思われますが・・・


オークション出張の合間に、どうしても、という展観に行ってまいりました。


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せとものフェスタ2024 瀬戸市美術館特別展「春岱―稀代の名工―」

開催日 : 2024年04月20日 ~ 2024年06月02日


『名古屋』駅から2駅の『栄』から始発しております、『名鉄瀬戸線』にて約30分で終点『尾張瀬戸駅』、からの徒歩8分。


なんと、『加藤春岱』の単独展としては60数年ぶり!という偉業がついに為されました☆

うちの師匠の動きが大きく作用したようですが。(^^;

これは・・・見逃せない・・・しかし、仕事のスケジュール的にうまくついでに絡ませられない。。。

ということでの強行軍でした。


なかなか、見事な展示数とフルサイズの図録が用意されてます。


その数・・・なんと『70点』!

プラス、有名な・・・『唐三郎文書』などの古文書も9点!

よだれが出そうでした。


せっかくなので、瀬戸の窯場あたりの散策も。


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『むしあけ』に行った時も思いましたが、江戸時代や明治の雰囲気がまだ感じられる場所でした。

悪く言えば、開発されてない・・・観光として発展してないことでもありますが、それもまた良し。


時間が無かったので、『加藤民吉』の生誕の地や石像には伺えませんでした。そちらはまたの機会に。


『尾張陶』ファンにはおススメです。



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さて、5月といえば…毎年恒例の『十軒店』がございます!

第5回目を迎えることとなりました☆



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2024年5月22日(水)~29日(水)迄の8日間のイベントです。

私も、22日(水)23日(木)29日(水)の3日間滞在致します☆


詳細はインスタグラム、並びに・・・当JFKでも、別に特集記事を設けますのでご覧くださいませ。



それでは、【新入荷情報】を。



◎十一代 中川浄益 伝来写エフゴ 建水

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※ご成約済みです。


◎嘉永元年頃 永樂保全 河濱焼 平茶碗 不識斎好み

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昨年から・・・・不思議と、ご縁が続いております、『河濱焼』ですが。

今回は、平茶碗です。なかなかの良い絵付けでいい仕上りとなっております。

『月に萩』の図柄です☆


◎江戸時代後期 高橋道八 讃窯 伊羅保 茶碗 八代極め箱

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讃窯で、伊羅保は珍しいですね。二代か三代かは、ちょっと特定出来ません。



※ご成約済みです。



〇昭和前期頃 初代 徳田八十吉 抹茶四ッ揃(貝文皆具) 壱組

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初代八十吉のバイブル、昭和51年の小松美術館の展観出品作&図録所載品です!

皆具は、とても珍しいのです。


※保留中


〇昭和後期頃 初代 徳田八十吉 古九谷写意 鴛鴦文香合 九谷村原石

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こちらも、小松美術館の展観出品&図録所載品です!


粋な意匠のレアアイテムです。


※商談中です。



〇昭和後期頃 初代 徳田八十吉 古九谷欽慕式紙 菓子皿 【10枚】

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箱には記載されておりませんが、色調から九谷原石使用と思われます。

お洒落な意匠で、平向付としても良いでしょう!



○元禄4(1691)~享保元(1716)年頃  樂 宗入 黒瓢箪 茶入 覚々斎 箱 直入極め外箱

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これは・・・なかなか、グッとくる作品です。

1700年前後の空気感を感じるものです。

宗入は、尾形光琳・乾山の従兄でもありました。また、利休没後100年であり長次郎回帰の志向も感じられるのです。



○大正時代 永楽妙全 染付吉字 中皿 【10枚】即全極め箱

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幅15.5cmのお使いやすいサイズです。古染付の写しであり、厚手となっております。



○大正初期頃 初代 眞葛香山 乾山意椿之画 菓子器 二代遺作箱

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初代の鉢の中でも、逸品に類するものです!



○明和3(1766)~文化元(1084)年 初代 高橋道八 黒茶碗 共箱 銘 寿松  鵬雲斎 箱

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初代で、ここまでの良い黒樂はなかなか出てまいりません。状態も良く。

高台側に広がる朱釉が、拝見時のお愉しみです。



○大正4(1915)年頃 永楽得全 乾山写黒茶碗 惺斎箱 即全極め

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和全が、鴻池家の還暦祝として鴻池所蔵の乾山を模して造られた有名なお茶碗が在ります。

これは、それをモチーフに得全がリメイクしたもので、保全と才能や気質が似ていたといわれる得全の力量が発揮された逸品となっております。



○古八代焼 茶器

八代焼 茶器 (4)-2.jpg

八代亜紀さん、亡くなられてしまいましたね・・・[あせあせ(飛び散る汗)]


味わい深く、元は筒向付であったと思われます。

茶器に仕立てられておりますが、酒器や茶箱用茶碗にもお使いになれそうです。




○幕末~明治期 絵志野 茶入

藩窯が終わりに向かい、様々な名工たちが独自の路線に向かいます。

この茶入はとても良い土と釉薬にて、きちんと茶器としての仕上がり抜群に造られたものです。

牙蓋も、仕立て仕覆も、遠州流的な桐箱も完璧なパッケージングです。

底部の花押がどのお茶人さんかだけが不明なのです。



○幕末~大正期 高取 茶入

高取焼 耳付茶入 (4)-2.jpg

こちらも、幕末に藩窯が終了してしまう前のまだ手間とコストをかけられていた頃の高取焼です。

おなじく、仕立ても遠州流でバリっと仕上がっております。



 
【スケジュール】


6 オークション(大阪南美術会館)

  ~下見・会議

7 オークション(大阪美術倶楽部)

  14時頃~ベース

8~11 名古屋出張

9・10 オークション(名古屋)
11 オークション(名古屋美術倶楽部)


13 ベース  ⇒風邪で行けませんでした[あせあせ(飛び散る汗)]
14 ベース  午前 作品撮影
15 ベース      ~14時迄
16 ベース   
17 ベース  午前 ご予約有 午後 ご予約有  
18 ベース  午前 ×         ※夕方~荷造り


《19~23日出張です》

19 オークション(大阪美術倶楽部)
20 オークション(名古屋美術倶楽部)
21 オークション大会(京都美術倶楽部)

【22日~29日 日本橋骨董まつり~『第5回 十軒店』  (海老屋美術店)】

22 十軒店(東京日本橋) 滞在    午前 ご予約2件 午後 ご予約1  夕方 ご予約有
23 十軒店(東京日本橋) 滞在    午後 ご予約1 

27 ベース ※未定 調整中です。
28 ベース ※未定 調整中です。

29 十軒店(東京日本橋) 滞在

30・31 オークション大会(金沢美術倶楽部)




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Journal of FUJII KOUNDO 《問い合わせ先》


       藤井香雲堂
 

TEL 090-8578-5732


MAIL fujii-01@xc4.so-net.ne.jp


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【BASE 215】 大阪市浪速区日本橋東2-1-5 大阪南美術会館内


当店の出張営業所です。現在では『岸和田本店』よりこちらを中心に活動しております。

当ブログにてスケジュールをご確認の上、上記より事前に『ご来訪のご連絡』を頂戴致したく存じます。



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【第5回 十軒店】のお知らせですッッ! [催事]

【2024年5月2日 開催告知 更新】



今年も、5月といえばッッ!!


お江戸、日本橋の大都会に某地所が全域を占めるエリアの中に燦然とそびえたつビルっ☆

その名も、『海老屋美術店』。


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昨年、『三越百貨店』と同じく創業350周年(!)を迎えられました老舗さんでございます。

その地は、江戸時代に節句の時の飾り物などを売る・・・お店が軒を連ね、日本初の道具市であったという云われの地でもあります。


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海老屋さんのお店の前には、『十軒店跡地』の石碑も建立されており、その名を現代によみがえらせるべく・・・・十軒の骨董美術商が毎年5月に集結!ということで始まりましたのが、『海老屋 十軒店』というイベントなのです。

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【海老屋十軒店】


《東京》海老屋美術店

《金沢》石黒商店

《大垣》小野静観堂

《長崎》古美術長陽堂

《奈良》古美術中上

《福山》原古美術店

《高山》船坂慶祥堂

《大阪》藤井香雲堂

《名古屋》前田壽仙堂

《岡山》碧苑


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さて、第5回目となります今回は・・・


当店のテーマ、こちら。


【チャノユノビジュツ】

茶道具というフォーマットの中で、表現される美術観‥‥
それは『写し』という、『方程式の解』なのです。

様々な名工たちが挑んだ古のスタイルと新たな技術、そして自身のセンスの融合はその時にしか生まれなかった独自の世界がございます。

今回は、当店が常よりご紹介し続けております古の名工たちのWORKをご紹介したいと思います。


『茶道具』を『道具』として観るのではなく・・・『茶道美術』という観点から評価し、愛でて頂ける美術品として再認識頂けたら、という企画です。


会場となります、海老屋さんのお隣は・・・『三井記念美術館』が御座います。

そちらでは、このような企画で展観中です。


スクリーンショット (4).jpg


併せて、ご覧頂けると・・・桃山時代・江戸初期に生まれた『茶の湯の美学』から繋がる今回の企画の意図を感じ取って頂けることと存じます。



コロナ禍の第2回より、十軒店のインスタグラムでは会期前・会期中と・・・『インスタ会場』として作品のご紹介を展開しております。


https://www.instagram.com/ebi10tana/


会場にお越しになられない皆様方にもお愉しみ頂けることと存じます。


当店も、『十軒店』インスタアカウント、当店のインスタグラム『ceramic_works_labo』にて、5月1日より随時ご紹介をスタート致しますが、連動して当記事内にても作品のご紹介を随時更新して参ります。

ご高覧の程、よろしくお願いいたします!



【会期】

2024年5月22日(水)~29日(水)

11:00~19:00


私も『22日・23日・29日』の3日間は、会場にて滞在致します。是非皆様方をお会いしてお話をしたいと思います☆




【会場】


海老屋美術店
〒103-0022
東京都中央区日本橋室町 3-2-18

TEL : 03-3241-6543
FAX : 03-3241-1914

▼交通
東京メトロ銀座線三越前駅からA8出口より徒歩30秒
半蔵門線三越前駅から徒歩4分
JR総武本線新日本橋駅から徒歩2分
JR各線神田駅から徒歩5分
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