【仁阿弥道八 茶碗考①】~展観にみる、分布から~ [幕末京焼]
現在、『仁阿弥』のお茶碗が現在2碗、手元にありまして、アレコレと思いに耽る中・・・
ちょっと「仁阿弥 茶碗考」なぞ、していようと思います。
いつもでしたら、作品紹介に付随しての記載なのですが、ちょっと長くなりますのでお茶碗の紹介と併せて3部構成で参ります。(^^;
『仁阿弥道八』は、その高名さは幕末陶工の中では群を抜いてメジャーです。
もちろん、「技」の凄さはもちろんではあるのですが、寺社・宮門跡等からのご縁で、各地へ招聘されたりしたことで評価が広範囲に渡り、その効果でしょうか・・・日本各地に作品が伝播しておりますのが要因でしょう。
東京国立を始め・・美術館にも、あちこちに道八作品が所蔵されていることも、現代ではプラスに働いております。
しかしながら、『仁阿弥道八』単体での展観、というのは「安政2(1855)年」に仁阿弥が没してからの約170年の間に「2度」開催されたのみのようなのです。
◎昭和3(1928)年 5月12日~16日 (短ッ!)
京都帝室博物館 『陶工 仁阿弥道八 作品展』
◎平成26(2014)年 12月20日~平成27(2015)年3月1日
サントリー美術館 『天才陶工 仁阿弥道八』
他に、昭和13(1938)年に大阪市立博物館で、『一方堂』を中心にした展観が在ったという話ですが、内容は未確認です。
そもそも、当店が深く興味を抱いております、「幕末京焼」は近年に至るまで美術館の展観としてはスポットが当たってこなかったのです。
200年といった、年月の経過と共にようやく最近では表舞台に立ちだした感が在ります。
さて、先述の「2度」の展観の出品目録の中から・・・「お茶碗」に絞って調べてみます。
◎京都帝室博物館 『陶工 仁阿弥道八 作品展』
《茶碗出品総数 39点》
仁清・色絵 8
乾山 2
樂 黒 3
赤 4
瀬戸黒 1
高麗 井戸 1
三嶋 5
蕎麦 2
伊羅保 3
珠光青磁 2
御本 1
半使 1
刷毛目 2
桃山 1
他 2
この、数の分布は・・・私の経験上、近年の伝世品の流通状況に非常に近似したバランスに思えます。
「没後73年」といった当時ならではの、多岐に渡る所蔵者・・・おそらくは1次もしくは2次所有以内であることから、優品が揃ったことでしょう。
次に、10年前の方です。
◎サントリー美術館 『天才陶工 仁阿弥道八』
《茶碗出品総数 38点》
仁清 色絵 9
樂 黒 12
赤 5
高麗 三嶋 1
蕎麦 1
伊羅保 2
珠光青磁 1
御本 1
トトヤ 1
絵高麗 1
桃山 1
暦手 2
朝日 1
前者に比して、見当たらない技法もある代わりに、新たな技法のものの見られます。
『国焼写し』が登場しております。
京都の茶人・茶道具商の間で、永らく高い評価を受けてきたのは、この内で『志野 永井信斎所持 年男 暦手 写し』でしょう。
幕末期は、特に人気だったのか・・・樂了入や、他の陶工での写しも確認しております。
しかし、やはり『仁清写し系』『樂』『高麗写し系』
この3種が道八の真骨頂と云えます。
仁清系は、当時の「絵師」とのコラボレーション作品も、道八作としてはポピュラーです。
それらは、大概にして・・・「侘びた」様相で「雅味」のあるものです。
しかし、本人による「色絵」は・・・ちょっと、評価が分かれるところでしょう。
実の弟であります、『尾形周平』にも共通する感じも在ります。
また、私自身も扱ったことが在りますが、「丸々」仁清写し・・・という作品が、確認されております。
それは、「仁清」印を用いており、共箱が無ければ道八作品とは確認し難いものです。
所有時は、最後まで腑に落ちず・・・しかし、作行きはどうにも道八であるのでした。
どうやら、この僅かに存在する「仁清写し」は、それ専用に「高橋家」が用意した「印」が用いられてるという説もようやく知りえました。
引き続き、今後も調査しますがここに記しておきます。
さて、『樂』系統です。
本樂(という呼び方で良いのかどうかですが)、が近所に存在しておりますのに、何故??
しかも、特に黒樂に至っては・・・仁阿弥は特に巧い!のです。
国焼研究家で知られました、故・保田憲司氏は道八の樂を高く評価しておりました。
近年、『樂直入』さんによる『玉水焼』の研究発表が為されました。
そこに至るには、過去・・・孤軍奮闘された『保田憲司』氏の『玉水焼』研究もベースにあったようですが、その・・・愛するあまりに私見が私情と紙一重な内容が、私個人は共感を覚えるところでは有りましたが、直入さんはあまり快く思われなかったようです。(^^;
しかし、その中の文面から・・・推察されることが在りました。
『本樂』というものの世間での「立ち位置」です。
もちろん、確実な評価とレベルで存在はしておりましたが、その流通範囲は、「金額的」もしくは「生産数」的な面で限定的であったかもしれません。
「脇窯」と簡単な紹介で現代に伝わる『玉水焼』が、実は京都市 ⇒ 京都府 という範囲で見た際には『南樂家』として「双璧」として認識され、一般人にはより身近な楽焼あったという可能性があります。
それでなければ、3千家の書付が当時より存在するのも、また中断期を挟んで幕末期に復興窯(と呼んで良いのか分かりませんが)迄稼働していたこと・求められていたことの説明が付かないのです。
そこで、『道八樂』(と称してみましょう)。
明治に入ってからの三代では見られなくなる「楽焼」ですが、初代・二代では主力作品であります。
ここには、上記のような世相・流通状況の中で・・・『樂焼』の需要が確実に存在したからということの裏付けとなります。
保田氏はノンカウに匹敵するともおっしゃられておりましたが、いいものは確かに良いのです!
次のブログでは樂焼作品をご紹介致します。
⇒ 続く
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ちょっと「仁阿弥 茶碗考」なぞ、していようと思います。
いつもでしたら、作品紹介に付随しての記載なのですが、ちょっと長くなりますのでお茶碗の紹介と併せて3部構成で参ります。(^^;
『仁阿弥道八』は、その高名さは幕末陶工の中では群を抜いてメジャーです。
もちろん、「技」の凄さはもちろんではあるのですが、寺社・宮門跡等からのご縁で、各地へ招聘されたりしたことで評価が広範囲に渡り、その効果でしょうか・・・日本各地に作品が伝播しておりますのが要因でしょう。
東京国立を始め・・美術館にも、あちこちに道八作品が所蔵されていることも、現代ではプラスに働いております。
しかしながら、『仁阿弥道八』単体での展観、というのは「安政2(1855)年」に仁阿弥が没してからの約170年の間に「2度」開催されたのみのようなのです。
◎昭和3(1928)年 5月12日~16日 (短ッ!)
京都帝室博物館 『陶工 仁阿弥道八 作品展』
◎平成26(2014)年 12月20日~平成27(2015)年3月1日
サントリー美術館 『天才陶工 仁阿弥道八』
他に、昭和13(1938)年に大阪市立博物館で、『一方堂』を中心にした展観が在ったという話ですが、内容は未確認です。
そもそも、当店が深く興味を抱いております、「幕末京焼」は近年に至るまで美術館の展観としてはスポットが当たってこなかったのです。
200年といった、年月の経過と共にようやく最近では表舞台に立ちだした感が在ります。
さて、先述の「2度」の展観の出品目録の中から・・・「お茶碗」に絞って調べてみます。
◎京都帝室博物館 『陶工 仁阿弥道八 作品展』
《茶碗出品総数 39点》
仁清・色絵 8
乾山 2
樂 黒 3
赤 4
瀬戸黒 1
高麗 井戸 1
三嶋 5
蕎麦 2
伊羅保 3
珠光青磁 2
御本 1
半使 1
刷毛目 2
桃山 1
他 2
この、数の分布は・・・私の経験上、近年の伝世品の流通状況に非常に近似したバランスに思えます。
「没後73年」といった当時ならではの、多岐に渡る所蔵者・・・おそらくは1次もしくは2次所有以内であることから、優品が揃ったことでしょう。
次に、10年前の方です。
◎サントリー美術館 『天才陶工 仁阿弥道八』
《茶碗出品総数 38点》
仁清 色絵 9
樂 黒 12
赤 5
高麗 三嶋 1
蕎麦 1
伊羅保 2
珠光青磁 1
御本 1
トトヤ 1
絵高麗 1
桃山 1
暦手 2
朝日 1
前者に比して、見当たらない技法もある代わりに、新たな技法のものの見られます。
『国焼写し』が登場しております。
京都の茶人・茶道具商の間で、永らく高い評価を受けてきたのは、この内で『志野 永井信斎所持 年男 暦手 写し』でしょう。
幕末期は、特に人気だったのか・・・樂了入や、他の陶工での写しも確認しております。
しかし、やはり『仁清写し系』『樂』『高麗写し系』
この3種が道八の真骨頂と云えます。
仁清系は、当時の「絵師」とのコラボレーション作品も、道八作としてはポピュラーです。
それらは、大概にして・・・「侘びた」様相で「雅味」のあるものです。
しかし、本人による「色絵」は・・・ちょっと、評価が分かれるところでしょう。
実の弟であります、『尾形周平』にも共通する感じも在ります。
また、私自身も扱ったことが在りますが、「丸々」仁清写し・・・という作品が、確認されております。
それは、「仁清」印を用いており、共箱が無ければ道八作品とは確認し難いものです。
所有時は、最後まで腑に落ちず・・・しかし、作行きはどうにも道八であるのでした。
どうやら、この僅かに存在する「仁清写し」は、それ専用に「高橋家」が用意した「印」が用いられてるという説もようやく知りえました。
引き続き、今後も調査しますがここに記しておきます。
さて、『樂』系統です。
本樂(という呼び方で良いのかどうかですが)、が近所に存在しておりますのに、何故??
しかも、特に黒樂に至っては・・・仁阿弥は特に巧い!のです。
国焼研究家で知られました、故・保田憲司氏は道八の樂を高く評価しておりました。
近年、『樂直入』さんによる『玉水焼』の研究発表が為されました。
そこに至るには、過去・・・孤軍奮闘された『保田憲司』氏の『玉水焼』研究もベースにあったようですが、その・・・愛するあまりに私見が私情と紙一重な内容が、私個人は共感を覚えるところでは有りましたが、直入さんはあまり快く思われなかったようです。(^^;
しかし、その中の文面から・・・推察されることが在りました。
『本樂』というものの世間での「立ち位置」です。
もちろん、確実な評価とレベルで存在はしておりましたが、その流通範囲は、「金額的」もしくは「生産数」的な面で限定的であったかもしれません。
「脇窯」と簡単な紹介で現代に伝わる『玉水焼』が、実は京都市 ⇒ 京都府 という範囲で見た際には『南樂家』として「双璧」として認識され、一般人にはより身近な楽焼あったという可能性があります。
それでなければ、3千家の書付が当時より存在するのも、また中断期を挟んで幕末期に復興窯(と呼んで良いのか分かりませんが)迄稼働していたこと・求められていたことの説明が付かないのです。
そこで、『道八樂』(と称してみましょう)。
明治に入ってからの三代では見られなくなる「楽焼」ですが、初代・二代では主力作品であります。
ここには、上記のような世相・流通状況の中で・・・『樂焼』の需要が確実に存在したからということの裏付けとなります。
保田氏はノンカウに匹敵するともおっしゃられておりましたが、いいものは確かに良いのです!
次のブログでは樂焼作品をご紹介致します。
⇒ 続く
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2024-02-16 10:50
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