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【湊焼 長浜窯八代 舞猩々 置物】 [国焼茶陶【江戸後期】]

たまには、茶道具以外のモノもご紹介致しましょう。

といっても、『床脇』の錺物にもお使い頂けますが。(^^;



ちょっと、希少な作品です。



湊焼 猩々置物 (3)-1.jpg


【湊焼 長浜窯八代 舞猩々 置物】


幅  17.6cm 

高さ 16.8cm

製作年代 幕末~明治初期頃

箱  共箱




『千利休』、の出身で知られる・・・大阪『堺』の地は、交易・商業・茶の湯の一大地として栄えておりました。


考古学的なやきもの、は置いておいて・・・

初期の『樂焼』は『長次郎』だけではなく、その周辺全てを包括して『長次郎焼』として初期樂に分類されるものです。

利休の庶子であります『田中宗慶』の子『常慶』『宗味』がそれぞれやきものを継承しております。

宗味は堺にて、『宗味焼』を創始し、『常慶』の子である『のんこう』は京都にて、『道楽』がこれまた堺にて『道楽窯』をそれぞれ始めるのです。


また、その同時期位に、京都より移ってきた『上田吉右衛門』が『御室焼』と称し、交趾焼など軟質低火度焼成のやきものを始めるのです。


所謂、『湊焼』というものはこの『上田窯』を中心として、派生・追従して諸窯が開窯していったという認識で良いと思われます。

いずれも、明治末期迄にはほぼ廃窯となってしまいました。

さて、今回の作品は『長浜窯』のものです。

『上田吉右衛門』の親戚で、『長浜屋』と『吉郎屋』の2家があり、上田窯2代目の頃(享保9年以降)に、本家に倣って窯を開きました。


この3家はお互い、切磋琢磨しつつ倣い、競い、高めあってきたようです。


湊焼 猩々置物 (3)-1.jpg


サイズ感といい、釉薬の発色といい、造形といい・・・抜群な作行きです。


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湊焼の代表する釉薬を全て組み合わせております。

『赤』『白』に『緑』『黄』といった『交趾』を使い、その4色のみで見事に表現しているのです。


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『舞』の『動』の表現と置物としての『安定性』という相反する要項を両立しております。


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『能』の5番目の題目が『猩々』です。


むかし、揚子江の傍らにある金山に、親孝行者の高風(こうふう)という男が住んでいました。

高風は市場で酒を売れば多くの富を得るだろうという、神妙な夢を見てお告げに従い市場で酒を売り始めます。

酒売りは順調に進んでいたのですが・・・

毎日高風の店に買いに来る客の中に、いくら飲んでも顔色が変わらず、酒に酔う様子がない者がおりました。

不思議に思った高風が名前を尋ねると、自分は猩々と言う海中に住む者だと答えて立ち去しました。

そこで高風は美しい月夜の晩、潯陽江の川辺で酒を用意し猩々を待っていると、水中の波間より猩々が現れます。


共に酒を酌み交わし、舞を舞い踊り、やがて猩々は高風の徳を褒め、泉のように尽きることのない酒壷を与えて帰ってゆくのでした。


このお話は日本での創作を加えたものらしく、元はベトナムの『獣』で、人の言葉を発し酒を好むことが中国の古代の文献に見られる『狌狌』(しょうしょう)から来ているようです。


しかし、陽気にお酒を飲んで舞う様子は愉しげなのです。

湊焼 猩々置物 (7)-1.jpg



現代、残っている『湊焼』は『津塩窯』のみです。

津塩家は、『長浜屋』を引き続いたものとし、現在は16代か17代となります。

しかし、長浜屋の歴史資料が消失しておりますので、代の計算は難しいと言われておりますが、わずかに遺されたものから研究者によると、この作品の印銘は『八代目』と分類されております。


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長浜屋の『吉兵衛』は、弘化年間(1844~1848)年頃~明治10(1877)迄の稼働であったようで、この作品は江戸後期~明治初期までとなります。

共箱も現存しております。


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他の湊焼が、『吉右衛門』を名乗るのに対して、長浜屋は『吉兵衛』となります。


湊焼 猩々置物 (1)-1.jpg



ここのところ、ご縁が在りまして・・・珍しい堺のやきものの入手が続いております。

同じ、『泉州』の地の人間としては親近感もさることながら・・・戦災により、知る人、知る術が年々減少する状況に、なんとか整理して世にご紹介したいと思っておりますのです。



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