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【市江鳳造 志野塩筒 茶碗】 [おもろいで!幕末尾張陶]

ベースでは、『今月のお茶碗』というものがございます。

一言で申し上げますと・・・『推し』、であり、『点出し』のお茶碗であります。

1月の、お茶碗のご紹介です。


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【市江鳳造 志野塩筒 茶碗】


(寸法)  幅 10.8㎝  高さ 9㎝ 高台径 4㎝

(製作年代)弘化4(1847)年頃


市江鳳造、ご存じの方はご存じですが、”わしゃ、知らん!”という御仁も多いかと思います。(^-^;


幕末の尾張藩士のひとり、で平澤九朗の弟子、というのが分かりやすいところです。

九朗ほど、多岐にわたる製作ではありませんでしたが、なかなか雅味のある作品を遺しております。


今回のお茶碗、鳳造の中でも逸品の部類に入ります。


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塩筒形です。しおげ、です。


元は塩入れ、や酢を入れていたこんもりした陶器を、茶人が寒い時期に使う茶碗に見立てたというところから来るようです。

利休時代にも使われていた記録があります。


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上から。

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反対側より。


一周、”千本松”が描かれております。


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高台側より。



さて・・・ここからが、このお茶碗の面白みのところ。


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高台脇に、朱書きにて”須磨”とあります。

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旧蔵者の印が箱に御座います。

”時流庵 蔵” ”一鶴” もしくは”一声”でしょうか。

明治頃の茶人のようですが、詳細は分かりませんが・・なかなかの文人ぶりです。

この方が朱書きをされたようです。


そのココロは。。


能の演目、”松風”からのようです。


田楽の名手亀阿弥がつくった汐汲という曲を、観阿弥が改作して松風村雨と名づけ、さらに世阿弥が手を加えて現行の曲にしあげたという見事なお話だそうです。

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秋の夕暮れ。

旅の僧が『須磨の浦』にて、なんとも・・・いわくありげな松の木の前で、ふと足を止めました。


その松が、在原行平の寵愛を受け、悲恋の末にこの世を去った・・・”松風”と”村雨”という姉妹の旧跡であると知った僧は哀れに思い、弔います。

そして、日も暮れる頃に『汐汲車』を引く二人の海人女が現れ、汐汲みを始めます。


ふたりに一夜の宿を乞い塩屋へ招かれた僧は、二人とともに秋の夜語りする中で、夕刻浜辺で弔った松の木のことを話すと・・・

二人は涙を落としながら、実は・・自分たちがその”松風”と”村雨”の亡霊だと明かします。


その昔・・・行平が三年ほど須磨にて滞在した折に寵愛を受けたものの、その後、都へ帰った行平はほどなく亡くなってしまい、ふたりも後を追うように死んでしまったと。


松風は、行平の形見の立烏帽子と長絹をまとい、松を行平に見立てて狂乱の舞を舞いますが、

僧に回向(えこう)を請い、後世を頼むと・・・夜も白んでだ頃、やがて二人の姿は消え、ただ松風が吹くばかりでした。



はい、『 』の中のキーワードがこのお茶碗にございます。


『須磨』と名付けられたこのお茶碗は『塩筒』であり、須磨の景色である『千本松』が一周に描かれております。
そして、千本末に吹く風…「松風」へと。


塩筒をひき、舞いを舞う・・・その情景が浮かぶような。


こういう、お遊びをするのが幕末~明治頃の文人趣味というものですね☆



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共箱です。


市江鳳造が80歳(江戸時代では大変な長生きです!)の年賀に際して、数の内として作られたことが分かります。

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作品にも、『八十翁 鳳造 (梨棗)印』とあります。


梨棗は、”りそう”と読むそうです。(読めますかいな・・・('_'))


弘化4(1847)年頃の作ですね。


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今月は、お越し頂きました皆様には、このお茶碗でおもてなし、させて頂いて居ります☆




市江鳳造

1768~1852 江戸時代後期の陶工。

明和5年生まれ。尾張藩士。平沢九朗にならい,茶器・雑器をつくる。

「梨棗(りそう)」などの印をもちい,鳳造焼といわれた。

江利右衛門と同一人とされる。嘉永(かえい)5年閏(うるう)2月14日死去。85歳。名は成房。通称は鯉右衛門(りえもん)。



※ご成約済みです。


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