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【辻鉦次郎(凌古堂) 夜寒焼丸三宝 蓋置】 惺斎 箱 [おもろいで!幕末尾張陶]

『夜寒焼』、千家流の茶会に於きましても登場することのある、名古屋の国焼です。


「やかんやき」?と尋ねられる方もたまにいらっしゃいますが、「よさむやき」でございます。


夜寒焼、は『辻鉦二郎』によって、明治12年ごろ名古屋の古渡夜寒の里(現在の名古屋市中区金山)に窯を築いて茶器を製造したのが始まりです。

『辻鉦二郎』は嘉永元年に酔雪焼を創始した酔雪楼主人・辻宗衛(惣兵衛)の子として生まれました。

最初の頃は名品の茶道具の写しを製作していましたが、次第に日用品としての陶器や染付なども製作するようになりました。


夜寒焼 丸三宝蓋置 (4)-1.jpg


【辻鉦次郎(凌古堂) 夜寒焼丸三宝 蓋置】


サイズ 幅  5.5cm

    高さ 4.3cm


製作年代 明治12(1879)~大正9(1920)年

箱   惺斎 書付




表千家流では、『碌々斎』も『夜寒焼』を訪れ、自筆の茶道具を残しております。


『夜寒焼』は染付磁器の茶器を当初製作していたようであり、碌々斎の訪問もその頃のようです。

明治29年には、『辻陶器工場』を設立、磁器以外の、黒釉・鉄釉のものや、『夜寒焼』としては伝世品を見ることの多い『乾山写』のものなど多岐に広げていました。

この作品も、『乾山写』の部類に入ります。



夜寒焼 丸三宝蓋置 (6)-1.jpg


得てして、やわらかい感じの作風が特徴の『夜寒焼』でありますが、このフォルムはとても「流線形」が素敵なのです。

台部分の側面には、『早蕨』のような絵付けが在ります。


夜寒焼 丸三宝蓋置 (5)-1.jpg


『丸三宝』形というのは、元は『墨台』から発展したものです。

角の『三宝』形に対して『丸三宝』となります。

「輪」の形状が多い、「蓋置」の中では天板が平の形状なのがこの部類の特徴です。

釜の蓋の安定性は、輪形とは変わりませんが、棚に飾った時の見栄えや、天面の意匠で愉しめるという側面があるのです。

こちらも『千秋萬歳』の文字が記されております。



「せんしゅうばんざい」とは、長い年月の意で、特に永年の繁栄や長寿を祝う言葉として古く中国からもたらされ、単に幾久しいの意で用いたり、非常に嬉しい気持などを表わす語として用いたりしました。


しかし、そこから日本独自の意味も広がっていきました。

日本古代の信仰に根ざす、正月の祝福芸能の一つとして、中世陰陽師の流れをくむ唱門師が、正月の吉例として諸家の門に立ち、家運・長寿のほめことばなどをとなえて舞う人たちのことを指すようになりました。

この場合は、「せんずまんざい」、というようです。


中世の頃には、小松をかざす仙人ぶりの装束が、後には『風折烏帽子』に『素袍(すおう)』姿になり、扇を持ったシテ(太夫)がワキ(才蔵)の鼓に合わせて舞い、かけ合いで祝言を述べるというものも現れます。

そちらは、「せんしゅうまんざい」、だそうで。


いずれにせよ、「新春」や「めでたい」ということですね。(^^;




夜寒焼 丸三宝蓋置 惺斎 (7)-1.jpg


『夜寒焼』の乾山写、は京焼の琳派風とはまた違う風合いとなります。


グレーの釉薬はより明るめの柔らかい感じに、そしてやさしいタッチの鉄絵にて意匠付けがされます。

この作品は無銘のタイプですが、夜寒焼では有銘・無銘どちらも存在致します。

表千家家元が最初から注文した場合には無銘の傾向があると、みております。


夜寒焼 丸三宝蓋置 (3)-1.jpg


『惺斎』の箱になります。


辻鉦次郎は大正9年8月10日に亡くなられました。

夜寒焼の末期頃の、惺斎による注文品として一定数製作された作品でしょう。


夜寒焼 丸三宝蓋置 (2)-1.jpg

夜寒焼 丸三宝蓋置 (1)-1.jpg



幕末期の尾張陶の味わい深さから、明治に入っての・・・貿易を目指した「瀬戸焼」の緊張感あふれる展開や、国内の茶陶や民間用の陶磁器を目指した「夜寒焼」「東雲焼」「豊楽焼」「不二見焼」などの諸窯の・・・身近になったやきもの群の面白さ、というのもまた注目すべきところなのです。


夜寒焼 丸三宝蓋置 (4)-1.jpg


※ご成約済みです。

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