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【初代 眞葛香山 菊形 水指】 惺斎 箱 [宮川香山 眞葛焼]

初代香山は、明治29年(1896)に帝室技芸員に任命されます。

陶芸では三代清風与平に続いて2人目の快挙でした。

結局・・その後、昭和初期の板谷波山まで合わせて陶芸界では5人しか任命はありませんでした。

明治23年に始まった、『帝室技芸員』は宮内庁により任命され、当時は定員が20名でありました。

その技術力はもちろん、人格に至るまで総合評価され・・国からの資金提供を受ける代わりに、様々な国家プロジェクトにも参画し、皇室関係者への献上品や注文品の製作も行います。

今回、ご紹介する作品はそのうちのひとつとおぼしき、珍しいものです。


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【初代 眞葛香山 菊形 水指】 惺斎 箱


時代 明治末期~大正初期頃

サイズ 幅26.8㎝ 高さ10.3㎝(塗蓋つまみまで含むと12.5㎝)



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惺斎箱となる、香山作品は二代にものとなることが大半です。

二代が大正後期に、表千家と知遇を経、家元である惺斎の好みもの製作や、書付作品を制作するようになったからです。

最初から千家を介するものは、共箱が無く書付のみとなります。

この作品は珍しいことに・・・初代の作品です。

元は”盛器”であったものです。


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この堂々とした立派な意匠、品格と造形の力がさすがの香山です。


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真上から見ると、菊の葉が”16”有ります。


菊紋の中でも本項の十六葉八重表菊のように、花の部分を中心に図案化したものを、菊花紋章・菊花紋・菊の御紋などと呼びます。

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観賞用としての菊は奈良時代に中国大陸に伝えられ、平安時代には、薬草や鑑賞目的で日本の文化の中に定着しており・・文様として装束などに用いられておりました。

鎌倉時代、院政を敷いていた後鳥羽上皇が菊の文様を自らの印として使用しております。

その後、後深草天皇以降も菊の文様を継承し・・・いつの頃からか菊花紋章、とくに十六葉八重表菊紋が皇室の紋章として慣例化しました。


この作品は、その形状と側面の絵付けから・・・皇室関係に献上を目的とした作品であったと思われます。

(16葉の文様は当時皇室以外の使用は禁じられております

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銘のパターンから、明治37年あたりが近いと推測できますが、このような書き銘は磁器の染付作品の大きなサイズによくみられるものです。

そのことからも、かなりの特注品であったことがうかがえます。

箱書きが大正後期の二代時代でありますが、製作年代は上限を明治37年から下限は大正5年までと限定出来ます。

明治天皇崩御後、大正天皇の即位による御大典の記念による製作品であった可能性が一番濃厚です。

製作依頼した(もしくは譲られた)皇室関係の方が所持するにあたって・・・これまた特別製の重厚な塗蓋を添え、表千家の箱書きを依頼し・・・盛器であった作品を水指としての用に見立てられたのでしょう。

わずか10年位で皇室関係の作品が一般人に渡ることは考えにくく、茶道を嗜まれた最初の所有者自身による意志であったことは間違いありません。


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当時、高コストをかけて製作された塗蓋ですが、100年経過しておりほんのわずかですが表面に亀裂が生じてます。しかし使用には問題無くこの先数十年は大丈夫でしょう。

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長板にしつらえてみると、この薩摩釉と意匠の高貴さを映えることでしょう。

平水指では無いので、平たく見えても低くはありませんので、炉の時期でもお使いいただけます。


菊ということから9月の重陽でも良いですし、もちろん祝日の行事ごとにも。


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初代香山による、この陶胎での薩摩釉にこの金彩を合わせた朱釉、深いブルーと緑を使う絵付けは古代文様ともいわれます。

日本の歴史をひもといて、古の天皇の物語に思いを馳せての取り合わせも一興かもしれません。


※ご成約済みです。


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