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大仲翆月 宝漆陶 鳥獣戯画茶碗 [茶道具]

当ブログでは・・・8年ぶり?に大仲翆月作品のご紹介です。

陶器の釉薬の上から蒔絵を施しています。

釉薬面に蒔絵をする技術を持っているのは宝漆陶・大仲翠月のみとされていまして、昭和十年にかの帝室技芸員の香取秀真が絶賛している記録が残っております。

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商工省が先般フランスへ送った工芸品の中に厳選を突破して十点迄も陶製美術品を出品している無名の一陶工大仲翠月氏の作品は、今迄日本に長い歴史を持っていて、しかも合成する事の出来なかった陶器と漆器とを見事に一個の製品の中に融和させている事がわかって、この実物を一見した帝国美術院会員香取秀真も「これは珍しい、よくここまで造れた」と感心している、我国美術品の海外進出を契機としてはからずも世に出た収穫だ
この前人未踏の境地を開拓した大仲翠月氏(四三)は京都嵯峨に生れ、少年の頃から蒔絵師になろうと志し、研鎖十六年、遂に時代の流れが古風な蒔絵を容れなくなった事から生活手段を失い江州信楽焼の研究に転向、苦心に苦心を重ねてようやくこの陶漆合成に成功したものである
その製法は信楽の土で一旦陶器を作り、漆で描く部分だけをけずり取ってこれを焼き上げてから蒔絵をほどこすので、漆器の蒔絵よりは丈夫で剥落の憂いもなく色彩も自由に描き得るので、髪飾りや帯止めなどの精巧細緻な服飾品に見事な製品を出している、大仲翠月氏は語るようやく人に見せられるものが出来る様になりました、誰もやらない事をやったというだけで美術家としても自分は満足です製法は割に簡単ですが、誰にも真似られぬという自信だけはあります

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さて、前置きが長くなりました。(^-^;


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大仲翆月 宝漆陶 鳥獣戯画茶碗


幅12㎝ 高さ7㎝ 高台径4.8㎝

共箱


手びねり、で形成されたこのお茶碗は、上記にもありますように信楽をベースにしていることが分かりやすい釉調です。

珍しいのは、『鳥獣戯画』の絵柄をお茶碗に施していることです。

もちろん、翆月ですから・・・蒔絵なのです。


故に、通常の絵付けのようにはいきません。

漆で描きますので墨や絵の具のようには伸びません。さらに蒔絵をしますのでより難しくなるのです。


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鳥獣戯画、美術愛好家以外でも人気のある題材です。

京都市右京区の高山寺に伝わる紙本墨画の絵巻物で国宝となっております。

甲・乙・丙・丁と呼ばれる全4巻から構成されており、描かれた当時の世相を動物や人物を戯画的に描いたものです。

特に兎・蛙・猿などを擬人化されて描かれた”甲巻”が有名です。

一部の場面には現在の漫画に用いられている効果に類似した手法が見られることもあって、「日本最古の漫画」とも称されます。

12世紀 (平安時代末期)~13世紀( 鎌倉時代初期)の間の複数の制作者による、別の作品が高台寺で収まっていたことでひとつのシリーズとして伝世したものと推測されております。

現在は甲・丙巻が東京国立博物館、乙・丁巻が京都国立博物館に寄託保管されています。

数年前に、大阪中之島に出来ました、香雪美術館 新館にて鳥獣戯画が公開され、私も観に行ってきました☆

それらの作品の一部を引用してご紹介してみましょう。

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東京国立博物館蔵

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京都国立博物館


後年の研究により、『甲』が修復時に順番を入れ違いで繋ぎ合わされたであろう、とか『丙』が本来一枚の紙の表裏に描かれものを、剥がして両面を繋いだことなどが判明してきました。

・・・と、作品に戻りましょう。(^-^;

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『金』の蒔絵です。 金の色調が暗めにしてあるので漆にも見えます。

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蛙のみ、ですね。


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見込み部分には、信楽焼のような上釉のビードロ調の”溜まり”があります。

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高台側です。

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『宝漆陶 喜寿翁 翆月作』

1969年~1970年辺りに製作されたことが分かります。

約50年前です。(わたくしと同じ年です・・・汗)


秋のお茶碗として、愉しめる趣向で珍しい作品です!



大仲翠月(久次郎)明治26年~昭和50年

中大路季嗣に蒔絵の手ほどきを受け、のち富田幸七に師事、その後約10年間信楽に住み陶器の技を覚え陶胎漆器を志す。

京都へ帰り陶胎漆器の茶器や置物を造ることに専念。陶漆工芸を称す。

昭和16年工美展入選

昭和19年戦時中の技術保存者乙種1級



※ご成約済み


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