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【樂 旦入 赤筒 茶碗】 銘「庵の友」 共箱 直入極 鵬雲斎箱 [幕末京焼]



『樂茶碗』、は茶会の花形として・・・はや400年近く君臨しております。



もちろん、それ以前からの唐物中心の武家茶や、現代まで少数ながらも堅調な『寂び道具』における高麗モノや桃山和物を中心とした『花形茶碗』というものはございますが、大勢に於いてはそこまでのお道具を手にすることも難しいもので。。。。


主茶碗を『樂』とし、2碗にて『高麗』の比較的時代の下るモノを併せるか、幕末期~近代の和物を持ってくるか、というところでしょう。



その形式、がスタンダードとなり・・・逆にそれが『法則』のように呪縛としてのしかかった結果、


古い樂 > 新しい樂 > 大樋焼 > 吉向や道年、長楽  という序列で、まるで流通硬貨のように使われてきたのです。



しかし、戦後茶道の形式的な流行が、作法や行儀見習いとしての稽古を中心とした結果、そして世代の代替りが進んだこともあり・・・現在では、すっかりお道具の価値観が『変化』してしまいました。



『道具』は使ってこそ、その価値観が維持されるものであり、使わない道具はただの塊になってしまいます。

そこで、結局のところ・・・問われるのは、『モノ』としての価値、『美術』としての価値となります。




それは、近代茶道の形式的な拡大の中で、確実に残り続けた『錆び道具の茶』と同じく、道具としての本質、茶人様としての本質、が問われ続けることなのでしょう。


コロナ禍において、さらにそのことがはっきりとしてきた感じですが、決して悪いことでは無いように思えるのです。



と、序説が長くなってしまいいましたが・・・そんなわけで、『茶道美術』としてご紹介したい『樂』茶碗シリーズ、昨年からちょこちょこ手に入れるようにしておりますが、今年の第1弾です☆



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【樂 旦入 赤筒 茶碗】 


幅    9.8cm

高さ   9.8cm

高台径  4.9cm


製作年代 弘化2(1845)~嘉永7(1854)頃


共箱、直入極箱 鵬雲斎箱 銘 『庵の友』



旧暦12月18日『大寒』(新暦1月20日)も終わり・・・新春を迎えておりますが、まだまだ寒い中で、これから春へと向かっていくスタートラインです。

旧暦の1月に(新暦2月)で筒茶碗を使うことが多いのは、ちょうど寒さのピークである山の辺りで、冷めにくい形状を求めたことからなのでしょう。



『筒茶碗』というと、縦長のイメージですが、寸法をご覧頂きますとお分かりのように・・・


縦横・・・『同寸』なのです。


見た目のマジックですね~


もちろん、この直径ではお点前上では筒のお点前のように、茶巾は指先で摘まんで見込みを拭かないといけません。


個人的には筒茶碗、好きなのです。


幕末尾張陶で、馴染みのある形状ということもあるのでしょうが、それよりも『カッコよさ』を感じるのです。


光悦茶碗でも多いように、『造形』美がとても現れる形状だと思うのです。


その点、造形については光るところのある名工、旦入の仕事を見てまいりましょう。



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『正面』は『窯変』による黒緑色が全面に広がり・・・黒茶碗でなくても、格調を感じさせます。


右側辺りに、縦の『箆掻き』の線が4本あり、これから始まる造形のドラマのプロローグとなっております。

下部には、『赤い斑点』が数か所飛んでおり、まるでこれから咲き始める『梅』を予感させます。


酸化と還元による変化による発色なのです。


やや、『くびれて』いるのですがこれも旦入の特徴のひとつであります。


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少し右側へ回ってみましょう。


箆は、どんどん大胆になり・・・くびれの中心となる辺りの、箆削りはまるで光悦のような芸術的な一撃を放っております。

このくびれ部分、正面でお茶碗を手にする際、右手におそろしくフィットするようになっておりまして・・・その絶妙さは驚かされます。


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さらに、右に回していきます。


薄い刷毛のような白化粧が、まだまだ寒く吹きつける風のように、うっすらと。


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正面にもどっていくにつけ、その白い刷毛はどんどんと穏やかな感じになっていき・・・暖かな春の訪れへと向かう様を現しているかのようです。


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内側も、底は赤色、側面は黒緑の窯変と白刷毛が渦巻いております。


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高台周りの形状です。


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旦入時代の、良い土です。 得入が用意して寝かせていたものです。

隠居印、が箆削りから成るスカート状の先端に続くように押印されております。


旦入の晩年の10年間の内の作となります。


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外箱です。眼鏡タイプになります。

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共箱、と直入極め箱の2つになります。


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共箱


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直入極め箱


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鵬雲斎大宗匠による、書付です、


『庵の友』


末永く、寄り添って頂けたら、と思うのです。



箆の名手であった、父了入よりさらに進化させた『旦入の箆』の技が時に軽妙に、時に大胆に・・・存分に発揮された作品です。


旦入は、これまでの樂茶碗の伝統に、織部や唐津などの桃山陶の形状や色彩感覚、そして高麗茶碗のもつ用の美、素朴な侘びさ等も合わせた、新たな作風を完成させました。

それは、政治的には逼塞していった江戸時代後期では、逆に京焼においては、『進化と開放』へと向かっていく頃でったという、時代背景の元に実現した、その時ならではの才能開花であったのでしょう。


『お道具』として、も活かしてもらうのはもちろん、持っていて見るだけでも愉しい、『茶道美術』なのです。




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