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【永楽保全 祥瑞輪誌歌有 蓋置】 十七代極め箱 [永楽保全  Blue&White]

2020年・・・『おもろいで!尾張陶 & 永樂保全 Blue and White』という企画を準備しておりました。

しかし、2月下旬より・・・例のコロナ蔓延により、お流れに。

前者は、2021年6月に名美アートフェアにて、一応の陽の目を見ましたが・・・名古屋でない場所での啓蒙が出来ずで、そちらはようやく本年、10月~11月に東京・京都・金沢にてその企画をご覧頂くことになります!

後者の方は、せっかくの優品が揃ったタイミングでしたが、在庫を一度解散してしまいまして。(;^_^


その後、ほそぼそと・・・仕入れてはお譲りして、を繰り返しております。

そんな、『永楽保全 Blue & White』な逸品のご紹介です。




保全 祥瑞詩歌蓋置 (4)-1.jpg


【永楽保全 祥瑞輪誌歌有 蓋置】 


幅  5.6cm

高さ 5.3cm

製作年代 天保年間末期(1843年頃)

箱  十七代極め箱



江戸時代後期、京焼が再び脚光を浴びる新時代に突入しました。

あらたな工人、あらたな技術が生まれ、初期京焼を踏襲しつつ・・当時の時代性も反映させながら、新しい魅力を含んだ作品が大いにもてはやされたのです。

『青木木米』や『仁阿弥道八』が、『芸術家』的であったのに対して、永楽保全は『工芸家』的でありました。


しかし、『超一流』の『工芸家』なのです。


保全の生い立ちを紐解いて参りましょう。


京都西陣の織屋、「沢井宗海」の子として生まれ。(これは確かではなく一説として)その後、「黄梅院」へ預けられ「大綱和尚」の喝食となりました。

その後、西村家(※この頃は永楽姓ではない)の十代である「了全」に子が居なかったことから大綱和尚へ相談したところ、養子縁組となったということです。

文化3~4年頃であり、保全が12,3歳の頃です。(保全37,8歳)

しかし、それは単なる縁組でなく保全の類まれなる才能を見込んでということでありました。

幼少時より、大綱和尚より「禅学」「禅道」を指導され、書道は「松波流」、画は「狩野永岳」に学びます。他にも和歌を「香川景樹」、さらには「舎密究理」(現在の科学)を医家の新宮涼庭、シーボルトの門下の日野鼎斎に学び、「蘭学」を広瀬玄恭に教えを受けておりました。

これらのことからも分かりますように、永楽保全は当時の文化人の第1級の様々な人たちからの薫陶を受け、今の大学院卒以上の博士級の学識を持っておりました。

陶技は、深草の「人形屋市右衛門」「土器研究師 山梅」の元で研究し、義父である「了全」からの教えを受けました。


保全の研究熱心さと向上心は尋常でなく、西村家の元代々専業とされていた、「土風呂師」から脱却し「陶芸師」を目指すことへも繋がります。


その後の歴史をこの調子で語ると・・・長くなりますので。(^^;



作品をご覧いただきます。


保全 祥瑞詩歌蓋置 (4)-1.jpg


保全の代表作のひとつに、『祥瑞写し』がございます。

明るく、かっちりした…その後の永樂スタイル的なものもありますが、こちらはより唐物風の味わい深い作行きです。


これは『碁打ち図』でしょうか。


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呉須の発色もよく。

『詩紋』



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舟に人物ですが、中国の図柄からすると、『漁夫』図でしょう。



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『人馬』図です。

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内側には、『瓔珞紋様』が施されております。


保全 祥瑞詩歌蓋置 (9)-1.jpg


押印にて『河濱支流』印と、書き銘にて『大日本天保年 永楽保全製之』とあります。



さて、ここで面白い点が。



これまでも、何度かご紹介しております内容ですが・・・・保全の製作時期区分は以下の3期に分けられます。



『善五郎』時代 文政10(1827)~天保14(1843)年


『善一郎』時代 天保14(1843)~嘉永元(1848)年


『保全』時代 嘉永元(1848)~嘉永7(1854)年



『善一郎』から『保全』(やすたけ)と記すようになったのが『嘉永元年』といわれます。


そして、上記の通り、『善一郎』時代は天保14(1843)年~嘉永元(1848)です。



ん?と思われた方、いらっしゃいますね。


『天保年』に『保全』なのです。


永楽保全や和全のパトロンとして支えた三井家の優品の多くが収まっている、三井記念美術館によると所蔵品から、『弘化4年ころから保全の箱書がある』とされております。


弘化4年は1847年です。

この作品の存在から・・・遅くとも、天保14(1843)年には『保全』を名乗っていたことが判ります。


しかし。


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17代永楽善五郎(而全)の極め箱なのです。


文書などでは、保全という名前は号としての保全より以前から使っていたと云われます。


この作品は『やすたけ』という意味で印とは別に署名されたのかもしれませんが、この作品に共箱が存在していたのならば・・・・面白い資料となったでしょう。


しかし、この作品自体も貴重なものであることは間違いありません。


作品の上がりからも、製作年代的には『善一郎』時代のクオリティです。



保全 祥瑞詩歌蓋置 (4)-1.jpg



今、保全作品の染付の優品が3点御座いますので、徐々にご紹介いたしたいと思います。




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