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【古曽部焼 雪笹 手鉢】 [国焼茶陶【江戸後期】]

秋をすっ飛ばしたような、今年の気候ですが・・・あちこちで初雪もちらほらのようです。

ということで、まもなく時候となります作品のご紹介です。



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【古曽部焼 雪笹 手鉢】


幅    25.2x17.7cm

高さ   18.2cm

製作年代 嘉永4(1851)~明治15(1882)年頃

箱    伝世箱




「三代 五十嵐信平」の作品となります。


「古曽部焼」は、大阪府高槻市古曽部町で存在した窯です。

寛政年間(1789~1801)頃に初代五十嵐新平が開窯し、明治末頃に四代で廃窯となりました。

現地での伝世では寛永年間にやきものをした人が居て、それが小堀遠州に認められたことから、「遠州七窯」のひとつに数えられているという話もありましたが、実際のところは・・・

作品も窯跡も発見されておらず、また・・・「遠州七窯」というモノ自体が、嘉永七年に発行された「陶器考」にて述べられた、「当時」の現存窯の中から遠州の好みに合致する、という窯を選ばれただけというのが真相のようです。

道具商の筆によるものですから、都合の良いような記述であったことは想像に足ります。(人のことは言えない?(^^;)


さて、作品に戻りましょう。


古曽部焼は比較的、暗い色調のもの・・・「灰色」や「緑がかった高麗風の色」、「くすんだような安南風のもの」がメインであり、初代辺りでは色絵のものなども在ります。


初代は地元の農家である五十嵐家の出で、京都で陶器を学んだようです。

古曽部焼は、基本的に藩窯でなく民窯であることから・・・茶器類もありますが、大方は日常使いのものを作っておりました。

そんな中、この作品の逸品さは群を抜いております。




古曽部 雪笹手鉢 (4)-1.jpg



「雪笹手鉢」、は「乾山」作がルーツとして広く知られております。


しかし、それは国焼コレクションの聖地として知られる・・・「滴翠美術館」に所蔵される作品”のみ”しか現存確認される個体は有りません。


むしろ、それを元としたと推察される「仁阿弥道八」作品が有名であり、その作品群によって現代迄知られることになったものです。


「仁阿弥道八」様式では、灰釉は明るく、取っ手は竹を拠ったような複雑なもの、本体は笹の形状に合わせた輪花口に透かしを入れ、脚は竹の根に。そして白化粧にて鮮やかに雪が舞うのです。

有名なものでは「湯木美術館」や「逸翁美術館」所蔵のものが知られますが、上記のような特徴は「伝乾山」作品には見られないものであり、また後世に仁阿弥道八作を写したものでもそのまま再現は出来ておりません。


道八作品が生まれて、そう時代が離れてない時代。


五十嵐信平(信五郎)(1833年生~1882年没)が幕末の万延元(1860)年頃に窯元を継承しました。

(※初代・二代の新平から字が変わります。)

仁阿弥の没後から5年ですね。



古曽部 雪笹手鉢 (5)-1.jpg



見事な造形です。



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雪の意匠も躊躇なく、鮮やかに大胆に。


古曽部 雪笹手鉢 (8)-1.jpg


反対側から。


今に至る迄、ここまで良く仕上がってる雪笹手鉢の写しは見たことが有りません。

三代信平は、窯の量産体制を整え雑器を数多く作るのですが、自身の製作レベルの高さは本作品で実証されます。


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故にでしょうか、印銘は量産型とは異なる、三代の中でも希少なタイプが使われております。



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古曽部 雪笹手鉢 (1)-1.jpg


大事にされていたことがうかがえる伝世箱です。


古曽部 雪笹手鉢 (3)-1.jpg



古曽部焼の名は、現在では異なるタイプの茶道具窯として新たに紀州焼をルーツにもつ寒川さんにより活かされております。

しかし、当時の世相や需要で人気を博し…民窯であった古曽部焼が「遠州七窯」に数えられる程の評価をされていたことは、近年では世の記憶から薄れつつあるのです。



※売却済みです。


《追記》ちょっと、要研究事項がありましたので・・・あくまで、この内容は参考程度でお願いいたします。私自身も追及したいと思います。(^^;

資料として、残しておきます。




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