SSブログ

【永樂保全 河濱焼無地 茶碗】 [幕末京焼]

「気づき」というものがあります。


当店では、新たに、手にした作品はまず、べースにて展示し、研究を行い・・その後、惜しみなく展示会に投入するのですが、それには「訳」がございます。

作者とか、作品の「説明」というのはすぐに出来ますが・・・それでは「本質」はまだ見えておりません。

そして、自身の経験や知識というのは、大したこと無いもので。

「解った」つもりにはなっているもので、「その先」にあるものを知りたいのです。


ベースで展示しておりますと、お客様の眼や同業者の眼に触れることで、気付いてないことを知らされたり、またじっくり対峙することで見えてきたりします。

多数お越しになられる「展示会」でもしかり。


年齢にかかわらず、経験や知識を積まれた方からのアドバイスや、お話してる中で自分の中で閃いたりすること等も多々ございます。

そして、これまた年齢や性別にも関係なく、特に知識お持ちでない方の曇りの無い眼で見て頂いた際の感想とか意見・・というのがまた、真理をついてることがあるものです。


当店の営業スタイルならでは、の双方向コミュニケーションが作品の理解を深めてくれるものと有難く思っております。


そういう、過程で・・最初の自己評価以上に、お客様の評価が高かった作品のご紹介を致します。


DSC01527-1.jpg


【永樂保全 河濱焼無地 茶碗】



サイズ 幅   10.7cm
    
    高さ  8.3cm

    高台径 5.3cm


製作年代 嘉永2(1849)~3(1850)頃

箱   共箱 而全極め添え書




嘉永元年、永楽善一郎を名乗っていおりました保全は、「やすたけ(保全)」へと号を変えます。

それは、その後7年の間に続く苦難の旅路のはじまりでした。


嘉永3年10月に江戸へ向かうのですが、その直前である嘉永2~3年頃、滋賀県琵琶湖畔である、膳所の地で作っていた作品群があります。


「河濱焼」(かひんやき)


京焼や中国陶磁器の「写し」の専門であった永楽保全が、おそらく・・・唯一、国内他地方のやきものを意識した「国焼」に挑戦したものです。


元は、「絵唐津」にインスピレーションを受けたようなテイストで、堀内家の5代目である「鶴叟・不識斎」の還暦を記念した製作であったと思しきもので、不識斎自身の雅味あふれる鉄絵による絵付けが施された保全の手によるゆがみを持ったお茶碗が中心のやきものです。

当方も好きなやきもので、よく扱うのですが・・・・

今回、ご紹介するのは「絵付け無し」の個体なのです。


保全 河濱焼無地茶碗 (6)-1.jpg
 

スッキリした感じです。

形状やサイズは、非常に手に馴染むモノで、「茶碗」として秀逸なものです。

正面はややへこみを持たせております。


保全 河濱焼無地茶碗 (9)-1.jpg


反対側です。


保全 河濱焼無地茶碗 (11)-1.jpg


口造りや茶溜まりも、非常に点て易いようになっております。

この、大きく回り込むような轆轤での造りの大胆かつ、見事なこと。


保全 河濱焼無地茶碗 (13)-1.jpg


高台周りもよく作られております。


保全 河濱焼無地茶碗 (14)-1.jpg


箆目、による削り出しの妙が冴えております。


保全 河濱焼無地茶碗 (16)-1.jpg


保全 河濱焼無地茶碗 (15)-1.jpg


「河濱」銘です。



保全 河濱焼無地茶碗 (1)-1.jpg




保全 河濱焼無地茶碗 (3)-1.jpg


甲書きです。


保全 河濱焼無地茶碗 (4)-1.jpg


保全の共箱となります。


通常は、「不識斎」の箱のみとなり、保全の共箱は存在しません。

それ故にこの個体は、不識斎の絵付けが無い為に共箱が存在し、希少なものとなります。

また、筆跡により保全時代の最初期と判断出来るのです。


17代永楽の隠居号である、「而全」の極めが添え書きされております。

おそらく、この保全筆跡を見慣れてない方もいらっしゃる為に、わざわざ付けたのでしょう。




保全 河濱焼無地茶碗 (5)-1.jpg


「河濱焼」は古来より珍重される為、高値で流通がされていたので基本的には伝世品は荒れていないモノが多いのです。

共紐や、添え書状も現存することも有ります。

さて・・・話を最初に戻しましょう。


このお茶碗は、私としましては・・・不識斎の画によるお茶碗を見すぎていたせいで、逆に物足りなく思っていた作品でした。


確かに、茶道具商や道具数寄の男性方には、私と同じような印象を持たれている様な方々が多かったのです。

しかし、裏腹に・・・年齢を問わす、女性の方々のこのお茶碗への評価の高さは目を見張るものがありました。


そういう方々のお話を伺っておりますと、このお茶碗で見えていなかったモノがどんどん見えてきました。


大きさ、重量、いやらしくなく、それでいて綺麗にかけられた釉薬、造り手の目線から見た場合は、轆轤の引き方から薄さの造り、そして箆での形成や高台造りにいたるところの秀逸さ。


経験や欲目で目が曇っていたことを気付かされたのです。


保全 河濱焼無地茶碗 (8)-1.jpg


そして、不思議なことに、このお茶碗は、その魅力をきちんと写真では収められないことが出来ないということも気づいたのです。


X(ツイッター)やインスタグラムが苦手な私でありますが、まだまだブログも甘ちゃんなのです。(^^;



※ご成約済みです。



========================================================================


※当ブログはPC用サイトでの閲覧を推奨しております。

スマートフォンでご覧頂く場合もPC用表示をご選択下さい。


========================================================================

Journal of FUJII KOUNDO 《問い合わせ先》


       藤井香雲堂
 

TEL 090-8578-5732


MAIL fujii-01@xc4.so-net.ne.jp


========================================================================

当ブログは、『藤井香雲堂』の各種インフォメーションをお知らせするものです。


インスタグラムやツイッター、Facebook等のSNS全盛時代ですが・・


ブログでしか表現出来ない情報をお届けする為、『敢えて』ブログ形式に拘っております!


お問い合わせはメールもしくはお電話にてご気軽にどうぞ。


=========================================================================



【BASE 215】 大阪市浪速区日本橋東2-1-5 大阪南美術会館内


当店の出張営業所です。現在では『岸和田本店』よりこちらを中心に活動しております。

当ブログにてスケジュールをご確認の上、上記より事前に『ご来訪のご連絡』を頂戴致したく存じます。



=========================================================================

nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0