SSブログ

【御深井焼 瀬戸黒 筒茶碗 『千歳』 惺斎 箱】 [おもろいで!幕末尾張陶]



御深井焼は・・・徳川御三家の筆頭である、尾張徳川家の御庭焼です。

初代義直が御庭焼として名古屋城御深井丸に寛永年間(1622~1644)に開窯。

次の光友の時代は前期の最盛期で、尾張では御深井焼以外にも横須賀御殿で、江戸では戸山御殿でそれぞれ新たに御庭焼が始められました。

その後八代宗勝まで断続的に続けられたが、九代宗睦の代で緊縮財政の為一時中断。

10代の徳川斉朝の文政年間(1818~1829)頃に新製染付焼の加藤唐左衛門により再興され茶の湯に熱心だった十二代斉荘公時代に最盛期を迎えるのです。





さて、今月25日~27日に開催されます『名美アートフェア2021』では、当店ブースは・・・・



『おもろいで!尾張陶 御深井焼(おふけやき) OWARITOKUGAWA Official Ware』


を、企画展示致します。

本来は昨年上半期の企画として準備しておりましたが、新型コロナ感染拡大によりフェア等が中止・延期が数多くある中で、宙ぶらりんになっておりました。(ミニ図録も刊行したのに・・・)

御深井焼、ならびに藩窯、参画した陶工、美濃・瀬戸焼、紀州徳川藩に関するもの・・・合わせて13点、展示即売致します。

今回、ご紹介いたしますのは、そこに展示する予定の新入荷作品です。



DSC05497-1.jpg



【御深井焼 瀬戸黒 筒茶碗 『千歳』 惺斎 箱】



幅 9.3㎝ 高さ 8.3㎝


少し、こぶりではありますが、なかなかのお茶碗です。

見事な瀬戸黒の釉薬です。


DSC05498-1.jpg


形状的には黒織部の半筒茶碗と同じなのですが、真っ黒ですので引き締まって小さ目に見えてしまうのです。

DSC05499-1.jpg


釉ちじみなども、景色として愉しめます。


腰の下部より窯変により、朱釉っぽく発色しております。

「瀬戸黒」というのは鉄釉をかけて、1200℃もの高温から引き出して急冷することにより、発色する釉薬のものです。

釉薬における鉄釉の割合は10%程度といわれております。

同じ製法によるものに、織部黒、と黒織部がありますが瀬戸黒はほぼ茶碗のみしか製作されてなかったようです。


DSC05500-1.jpg


上部より。


DSC05501-1.jpg


高台側です。 このねっとりした粘土質の土・・・これぞ、祖母懐の土です。


尾張藩の御留め土として、他での使用を禁じられたもので・・・まさに、御深井焼独自のものといえるでしょう。

一説には、鉄砲の玉に転用出来るから、城内に保管されていたという話もありましたが・・・そういうものではなく、あくまでプレミアム感を演出するためのモノであったようです。


DSC05502-1.jpg


『祖母懐印』は、大中小が現存し徳川美術館に保管されております。

もう1種、あるといわれますが裏付けは取れておりません。


明治以降ならびに、贋作としての祖母懐印のある茶碗などが多数流通していることも、御深井焼へのあこがれが高かったことの証です。


DSC05503-1.jpg


惺斎の大正初期の箱書です。


DSC05504-1.jpg

利斎による桐箱です。不審庵の受取状も現存します。



徳川斉荘は裏千家11代玄々斎に茶事を学び、伝来の名品や贈答用の御庭焼への箱書をさせて重用しました。これは玄々斎が三河奥殿藩主松平家から裏千家へ養子入りしており、尾張藩家老の渡辺規綱は実兄であること、斉荘が藩主に就任したとき(天保10年1839)規綱の長男寧綱が家老になっている事とは無縁ではないと思われます。


また、東海圏全体としては松尾流が盛んでありましたが、堀内家等も広まっておりましたので幕末から明治以降は、表流派への茶人の広がりを見せ、このお茶碗のように表千家の箱のものも後代に増えてます。

碌々斎も瀬戸の窯元へ赴き、その縁から大正期には惺斎による新黄瀬戸の好み物シリーズ等へと繋がっていきました。


 
「前期」御深井焼では藩主及び、藩の献上品・贈答品・城内調度品などが制作され、「後期」御深井焼ではそれに加えて、藩主自らの手造りや家臣への下賜品が作られるようになります。

出仕したのは、前期は瀬戸の御窯屋三人衆である加藤唐三郎・仁兵衛・太兵衛家と御焼物師 加藤新右衛門・三右衛門家で、義直が美濃より招聘し瀬戸の再建の為に擁護した家です。

「後期」御深井焼ではこれらの加藤家と新たに新製染付焼の加藤唐左衛門・川本半介らが参加し、尾張藩士で陶芸を得意とした平澤九朗や正木惣三郎、加藤春岱なども加わりました。


DSC05497-1.jpg



尾張徳川家の数ある本歌の数々を参考に製作出来ること、尾張陶工界のトップレベルの技術の投入、そして藩主の主導による非売品であったことなどから、これ以上に珍重される茶陶は無いといえます。


※御成約済みです。



=======================================================

Journal of FUJII KOUNDO 《お問い合わせ先》


TEL 090-8578-5732

MAIL fujii-01@xc4.so-net.ne.jp

=======================================================
nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。