【春井恒眠 笙蒔絵 香合】 [明治工芸]
※内容追記致しました。 (9月22日23時)
HARUI KOUMIN
はるい、こうみん・・・です。
こみん、ちゃいまんねん。
また、昭和後期~平成期に鵬雲斎の箱書きのある作品でみられる「恒眠」と書かれた作品群とも違います。(こちらは昭和期に二代長寛を自称された、書付モノ対応に道具屋主導で活躍された茶道具漆工のようなものと思われます)
「春井恒眠」は明治後期~大正期に活躍した近代漆工です。
大阪~京都、大阪へ戻り、そして兵庫へと移り住む中で、それぞれの風土のもつ気風を取り込み、丁寧な作品を制作されておりました。
まずは、作品をご覧いただきましょう☆
【春井恒眠 笙蒔絵 香合】
幅 7cm
高さ 2.8cm
製作年代 大正期
共箱
「笙」の意匠を表面に蒔絵で描かれております。
恒眠の得意とする、高蒔絵による重厚な蒔絵を、おとなしめの形状とデザインで圧迫感を与えずさらっと表現しております。
これは、これでもか!という存在感を求められす硯箱等の作品と違い、茶道具としての「用」を意識された風合いと思われます。
この、「引き」の美学は実力と品性を持った職人にしかなしえない加減です。
「笙」は雅楽で用いられる楽器です。
日本には奈良時代ごろに雅楽とともに伝わってきたとされます。
その形状から、翼を立てて休んでいる「鳳凰」に見立てられ、鳳笙(ほうしょう)とも呼ばれております。
粋な発想ですね。
散らされております、花びらが笙の周りを彩ります。
画像ではわかりにくいですが、これは「朱金」と「高蒔絵」を合わせて描かれております。
「蓮弁蘭」とも思ったのですが・・・・
「蓮の花」の方が近い気が致します。
この、笙・・・鳳凰と、蓮弁が合わさる意匠は、古染付等、中国の古い焼き物でも取り合わされておりますのは蒔絵の意匠としてはなかなか珍しく、粋な取り合わせですね。
上部と下部
底部が棗のような形状と、内側だけ梨子地にしているのも見えないところへのお洒落を感じます。
へっこんでますので、擦れによる痛みが生じないようになっているのです。
内側はシックな梨子地です。
標準的なものより、細かく蒔かれております。
共箱(甲)
共箱(裏)
春井恒眠は、明治2年に大阪で生まれました。
浪華画学校で絵画を学び、明治21年より京都の「池田合名会社」の工人となります。
この池田合名会社というのは、外国人向けの美術館(兼、販売所も兼ねておりました)を運営していた美術商で、池田清助さんという方は京都美術倶楽部の初代社長もされております。
そこで、グローバルな視野での美術品を取り扱うのに合わせて、自身の眼に適う工人を雇い入れておりました。
余談ですが。。。。初代香山の伝説的な、世界中のあらゆるやきものの名品の写しを混在させた大花瓶一対を、万国博覧会での騒動の際に、現地に赴いておりました二代香山が作品をぶち割って解決したというエピソードがございます。
その破片全てを買い取った、のもこの池田清助さんと聞いており・・・私としては、その行方を知りたいところなのですが、もはや廃業されて久しく・・・
話が逸れました。(^^;
春井恒眠はその後、大正3年に「藤田男爵」所有の須磨にある山に寓居し、製作を続けていたそうです。
スイスのジュネーブにある、「極東芸術美術館」・・・バウアーコレクションにも多数の春井恒眠作品が所蔵されております。
これは、バウアーコレクションの形成に尽力した富田熊作という方がいらっしゃったことによります。
この方は、商社によりロンドンへ派遣され、そのまま山中商会のロンドン支店で勤めることになり美術品への造詣を深めました。1915年~1921年に現地で東洋の陶磁器の評価を高めた立役者となり、多大な影響を与えたといわれます。
帰国後に京都に居を構えておりましたところ、バウアー夫妻が日本旅行へ来られた際にイギリス美術商に頼まれて案内を手伝ったことからバウアーの絶大な信頼を得、その後の東洋コレクション形成の助力を為したそうです。
この富田熊作さんが、最初に勤めていた商社というのが・・・・先ほどの、池田合名会社だったのです!
直接、春井恒眠の仕事・技術を見知っていた富田さんは世に出回っていた、春井恒眠作品を集めてバウアーさんに収めていったのです。
日本では、蒔絵マニアでしか知られてない春井恒眠が、かの地の世界的に有名なコレクションの中で世界中の人々に作品を紹介され続けておりますのは、この数奇なご縁によるものですが、なによりもそのセンスと技術が確かなものであったことからこそ、縁を引き寄せたのは違いないのです。
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Journal of FUJII KOUNDO 《問い合わせ先》
藤井香雲堂
TEL 090-8578-5732
MAIL fujii-01@xc4.so-net.ne.jp
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HARUI KOUMIN
はるい、こうみん・・・です。
こみん、ちゃいまんねん。
また、昭和後期~平成期に鵬雲斎の箱書きのある作品でみられる「恒眠」と書かれた作品群とも違います。(こちらは昭和期に二代長寛を自称された、書付モノ対応に道具屋主導で活躍された茶道具漆工のようなものと思われます)
「春井恒眠」は明治後期~大正期に活躍した近代漆工です。
大阪~京都、大阪へ戻り、そして兵庫へと移り住む中で、それぞれの風土のもつ気風を取り込み、丁寧な作品を制作されておりました。
まずは、作品をご覧いただきましょう☆
【春井恒眠 笙蒔絵 香合】
幅 7cm
高さ 2.8cm
製作年代 大正期
共箱
「笙」の意匠を表面に蒔絵で描かれております。
恒眠の得意とする、高蒔絵による重厚な蒔絵を、おとなしめの形状とデザインで圧迫感を与えずさらっと表現しております。
これは、これでもか!という存在感を求められす硯箱等の作品と違い、茶道具としての「用」を意識された風合いと思われます。
この、「引き」の美学は実力と品性を持った職人にしかなしえない加減です。
「笙」は雅楽で用いられる楽器です。
日本には奈良時代ごろに雅楽とともに伝わってきたとされます。
その形状から、翼を立てて休んでいる「鳳凰」に見立てられ、鳳笙(ほうしょう)とも呼ばれております。
粋な発想ですね。
散らされております、花びらが笙の周りを彩ります。
画像ではわかりにくいですが、これは「朱金」と「高蒔絵」を合わせて描かれております。
「蓮弁蘭」とも思ったのですが・・・・
「蓮の花」の方が近い気が致します。
この、笙・・・鳳凰と、蓮弁が合わさる意匠は、古染付等、中国の古い焼き物でも取り合わされておりますのは蒔絵の意匠としてはなかなか珍しく、粋な取り合わせですね。
上部と下部
底部が棗のような形状と、内側だけ梨子地にしているのも見えないところへのお洒落を感じます。
へっこんでますので、擦れによる痛みが生じないようになっているのです。
内側はシックな梨子地です。
標準的なものより、細かく蒔かれております。
共箱(甲)
共箱(裏)
春井恒眠は、明治2年に大阪で生まれました。
浪華画学校で絵画を学び、明治21年より京都の「池田合名会社」の工人となります。
この池田合名会社というのは、外国人向けの美術館(兼、販売所も兼ねておりました)を運営していた美術商で、池田清助さんという方は京都美術倶楽部の初代社長もされております。
そこで、グローバルな視野での美術品を取り扱うのに合わせて、自身の眼に適う工人を雇い入れておりました。
余談ですが。。。。初代香山の伝説的な、世界中のあらゆるやきものの名品の写しを混在させた大花瓶一対を、万国博覧会での騒動の際に、現地に赴いておりました二代香山が作品をぶち割って解決したというエピソードがございます。
その破片全てを買い取った、のもこの池田清助さんと聞いており・・・私としては、その行方を知りたいところなのですが、もはや廃業されて久しく・・・
話が逸れました。(^^;
春井恒眠はその後、大正3年に「藤田男爵」所有の須磨にある山に寓居し、製作を続けていたそうです。
スイスのジュネーブにある、「極東芸術美術館」・・・バウアーコレクションにも多数の春井恒眠作品が所蔵されております。
これは、バウアーコレクションの形成に尽力した富田熊作という方がいらっしゃったことによります。
この方は、商社によりロンドンへ派遣され、そのまま山中商会のロンドン支店で勤めることになり美術品への造詣を深めました。1915年~1921年に現地で東洋の陶磁器の評価を高めた立役者となり、多大な影響を与えたといわれます。
帰国後に京都に居を構えておりましたところ、バウアー夫妻が日本旅行へ来られた際にイギリス美術商に頼まれて案内を手伝ったことからバウアーの絶大な信頼を得、その後の東洋コレクション形成の助力を為したそうです。
この富田熊作さんが、最初に勤めていた商社というのが・・・・先ほどの、池田合名会社だったのです!
直接、春井恒眠の仕事・技術を見知っていた富田さんは世に出回っていた、春井恒眠作品を集めてバウアーさんに収めていったのです。
日本では、蒔絵マニアでしか知られてない春井恒眠が、かの地の世界的に有名なコレクションの中で世界中の人々に作品を紹介され続けておりますのは、この数奇なご縁によるものですが、なによりもそのセンスと技術が確かなものであったことからこそ、縁を引き寄せたのは違いないのです。
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2021-09-22 11:52
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