【永楽即全 仁清黒扇面 茶碗】 即中斎 箱 [茶道具]
今回は、マニアック・・・では無いですが、永楽さんのなかなか出ない逸品のご紹介です。
『千家十職』の中の『土風炉師・焼物師』であります『永楽善五郎』家ですが、現在では十八代目である『陽一』氏が昨年襲名されております。
初代は室町時代に奈良の西ノ京の『西村』にて春日大社の供御器を作っていたことから、西村性を称しておりました。
晩年より、『土風炉師 西村善五郎』として名乗り出したとのことですが、伝世品も無く・・九代目までの作品はほとんど見ることは有りません。
おそらくは、使い捨ての供御器であったり、民生用のものであったりと、消費されるやきものばかりを製作されていたことと思われます。
実質的な永楽家は『十代了全』からとなります。
樂家の『了入』を兄のように慕い、また表千家の出入りとなり、隠居時に『了々斎』から名を授かったりという、了全の晩年時代からの活動で、その頃には養子に迎えた『十一代 保全』の力に拠るところも大きかったと推測されます。
そこから、千家道具の製作として現代まで脈々と続いてくるわけですが・・・・
歴代の中で、一番長命であったのが『十六代 即全』です。
先代である父、『十五代 正全』が昭和7(1932)年に亡くなった後、平成10(1998)年に80歳で亡くなるまでの長期に渡り、製作活動をしておりました。
その間に仕えた表千家家元は、『惺斎』『即中斎』『而妙斎』と3代に渡り・・・まさに、戦前期・戦後復興期・現代という時代を生き抜いた陶家です。
それが故に、作品数も多く、また作調も変遷がみられるのが特徴です。
その中でも一番の円熟期の作品がこちらです。
【永楽即全 仁清黒扇面 茶碗】
幅 12.9cm
高さ 8.1cm
高台径 5.1cm
製作年代 昭和30(1955)~40(1965)年頃
共箱 即中斎 書付
仁清黒、は野々村仁清の頃より存在し、永楽家では明治期の『十四代 得全』以降に見られるようになります。
黒、のお茶碗は『樂』が主役であったことが関係してるのかもしれません。
しかし、黒が背景となることで引き立つ、色絵の美、は確かに有り・・・それを表現するのに、従来の色絵よりさらに手間をかける必要があったのです。
全面に書き込まれておりますので、ぐるっと回してみましょう。
正面の『梅』→『菊』『牡丹』
扇面の中に、金もふんだんに使用して描かれております。
『富士』→『竹』
次は、内側に参りましょう。
『菖蒲』です。
少し回してみますと・・・
『薄』です。 見込みには『松』も見えますね。
『青海波』です。
仁清黒、というのは、通常の仁清写しの釉薬の後に、上絵付として黒色を塗り分けていくことになります。
クリーム色の仁清釉を残しつつ、絵付けにもかからないようにするので失敗は許されません。(^^;
さらに、仁清写より絵付けの色彩と配置のバランスが問われますので、事前のデザイン画の重要性も高くなります。
高台部です。
仁清黒の中でも、このような逸品シリーズは、若干土の分量が多めで手にしたときの重厚な感じのことが多いように思います。
2重箱になります。
共箱部分です。この作品は最初から書付ありきでの特注作品ですので、甲書きの題字はありません。
即中斎の昭和30年代の筆になります。
約60年ほど前の作品ですが、このスカッとした綺麗さは時代を感じさせません。
永楽即全の中でも、明治や大正のきれいさから、戦後現代への発展が進むにつれ、人が目にする新しいもの、綺麗なモノ、への感覚が移り行く中で、完成させた『色絵美』がこの作品なのです。
こののち、即全はこの技法・感覚を元にして『源氏物語』をテーマとした集大成へと、向かうことになるのです。
※ご成約済みです。
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Journal of FUJII KOUNDO 《問い合わせ先》
藤井香雲堂
TEL 090-8578-5732
MAIL fujii-01@xc4.so-net.ne.jp
※当ブログはPC用サイトでの閲覧を推奨しております。
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『千家十職』の中の『土風炉師・焼物師』であります『永楽善五郎』家ですが、現在では十八代目である『陽一』氏が昨年襲名されております。
初代は室町時代に奈良の西ノ京の『西村』にて春日大社の供御器を作っていたことから、西村性を称しておりました。
晩年より、『土風炉師 西村善五郎』として名乗り出したとのことですが、伝世品も無く・・九代目までの作品はほとんど見ることは有りません。
おそらくは、使い捨ての供御器であったり、民生用のものであったりと、消費されるやきものばかりを製作されていたことと思われます。
実質的な永楽家は『十代了全』からとなります。
樂家の『了入』を兄のように慕い、また表千家の出入りとなり、隠居時に『了々斎』から名を授かったりという、了全の晩年時代からの活動で、その頃には養子に迎えた『十一代 保全』の力に拠るところも大きかったと推測されます。
そこから、千家道具の製作として現代まで脈々と続いてくるわけですが・・・・
歴代の中で、一番長命であったのが『十六代 即全』です。
先代である父、『十五代 正全』が昭和7(1932)年に亡くなった後、平成10(1998)年に80歳で亡くなるまでの長期に渡り、製作活動をしておりました。
その間に仕えた表千家家元は、『惺斎』『即中斎』『而妙斎』と3代に渡り・・・まさに、戦前期・戦後復興期・現代という時代を生き抜いた陶家です。
それが故に、作品数も多く、また作調も変遷がみられるのが特徴です。
その中でも一番の円熟期の作品がこちらです。
【永楽即全 仁清黒扇面 茶碗】
幅 12.9cm
高さ 8.1cm
高台径 5.1cm
製作年代 昭和30(1955)~40(1965)年頃
共箱 即中斎 書付
仁清黒、は野々村仁清の頃より存在し、永楽家では明治期の『十四代 得全』以降に見られるようになります。
黒、のお茶碗は『樂』が主役であったことが関係してるのかもしれません。
しかし、黒が背景となることで引き立つ、色絵の美、は確かに有り・・・それを表現するのに、従来の色絵よりさらに手間をかける必要があったのです。
全面に書き込まれておりますので、ぐるっと回してみましょう。
正面の『梅』→『菊』『牡丹』
扇面の中に、金もふんだんに使用して描かれております。
『富士』→『竹』
次は、内側に参りましょう。
『菖蒲』です。
少し回してみますと・・・
『薄』です。 見込みには『松』も見えますね。
『青海波』です。
仁清黒、というのは、通常の仁清写しの釉薬の後に、上絵付として黒色を塗り分けていくことになります。
クリーム色の仁清釉を残しつつ、絵付けにもかからないようにするので失敗は許されません。(^^;
さらに、仁清写より絵付けの色彩と配置のバランスが問われますので、事前のデザイン画の重要性も高くなります。
高台部です。
仁清黒の中でも、このような逸品シリーズは、若干土の分量が多めで手にしたときの重厚な感じのことが多いように思います。
2重箱になります。
共箱部分です。この作品は最初から書付ありきでの特注作品ですので、甲書きの題字はありません。
即中斎の昭和30年代の筆になります。
約60年ほど前の作品ですが、このスカッとした綺麗さは時代を感じさせません。
永楽即全の中でも、明治や大正のきれいさから、戦後現代への発展が進むにつれ、人が目にする新しいもの、綺麗なモノ、への感覚が移り行く中で、完成させた『色絵美』がこの作品なのです。
こののち、即全はこの技法・感覚を元にして『源氏物語』をテーマとした集大成へと、向かうことになるのです。
※ご成約済みです。
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2022-01-08 12:08
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