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【眞葛長造 成化模眞葛窯 小器】 10客 [幕末京焼]

当ブログでも、頻繁にご紹介させていただいております、『幕末期の京焼』、はまさに、『技』と『美』の競演とでもいいましょうか・・・

様々な才能が、同時期にあちこちで花開き、新たな感性・技術が生まれた時代と場所、でした。

特に『五条坂』の辺りではスターダムに乗った新人陶工たちが多数居たのです。


古くからの伝統の『粟田系』と新時代の『五条坂』は元々諍いの絶えない間柄であったようですが、その気風の違い、というのがこの江戸時代も終わりになろうとしている時代背景の中で後世にどう、残っていったのか?というは、伝わる作品から感じ取れます。


煎茶を中心とした、『文人趣味』を理解する『作り手』と『顧客』が居た五条坂では、その精神性が作品にこもっていることが多いのです。


今回ご紹介する作品も、そのような『粋』な作品のひとつとなります。




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【眞葛長造 成化模眞葛窯 小器】 10客


幅  6.5cm

高さ 7.5cm


状態 1客・意匠ホツレ、2客・焼成時の意匠離れ

共箱 (5客×2箱)

時代 江戸時代後期 (1800年代後半頃)




なかなか、洒落た意匠の猪口(筒向付)です。


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【小桃新謝後 雙燕欲来時】   

唐代詩人 鄭谷(842~910)「杏花」より


ていこく、という中国晩唐の詩人の句です。

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幼少から才名が高く,7歳で詩をつくったといわれております。清新な詩風で,写景,抒情に優れたそうです。



「杏花」


  不學梅欺雪,輕紅照碧池。

〇 小桃新謝後,雙燕卻來時。  

  香屬登龍客,煙籠宿蝶枝。

  臨軒須貌取,風雨易離披。



ちいさな桃が、新たに成ると、つがいの燕がそれを求めてやってくる、というところでしょうか。


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『仁清調』の作風が、代表的な長造ですが、『染付』も実は得意とします。


五条坂では、塩野熊吉郎が瀬戸の磁祖といわれる『加藤民吉』より遅れること数年・・・有田より磁器焼成技術を持ち帰り、仁阿弥道八に伝えたのが始まりで、その後、子である宮田亀寿、そして初代清風与平辺りが京焼染付の黎明期を支えました。

ご近所であった、長造も早いうちに染付技法を身に付け・・・古染付風の出来栄えを自在に表現出来ておりました。


『吹き墨』もいい色が出ております。


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葉の方は立体的に造形してあります。

近くには、辰砂を使った蜻蛉らしき意匠もありますね。


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真上から見ると、桃の形状が判りますね。


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高台側です。書き銘になります。



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早いうちに5客組を入手したのですが・・・10客にならないかなぁ・・・こんな珍品では無理だろうと諦めておったところ、奇跡の出会いが☆


5客×2組になりました。


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少しだけ、題字の表現が異なりますが、同時期の作でえあることがうかがえます。

また、2組手に入ることにより、どちらも1客だけ書き銘の書き方を変えてあることも判明したのです。


『成化模 眞葛製』が4客に(8客に)、『眞葛製』が1客(2客)となります。


中国の明時代中期の成化年間(1465~1487)・・室町時代足利義政の頃の、染付磁器の感じを写したということです。


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1客、は残念ながら意匠がホツレてしまっております。

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他に2客が、元々意匠が離れております。

磁器焼成の温度管理は難しく、ここまでの形状と上がりが初期京染付で仕上がってること自体奇跡なのです。


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轆轤により形成したあと、歪みと意匠を加えているようです。


大きさも、手取りがよく、こぶりの酢猪口としても、小向としても楽しめそうです。


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本当に、この頃の京焼陶工の学の高さとセンスの良さには感服するところがあります。


作品ひとつ、で・・・主客であーだこーだと、話が弾むというこれぞ、文人墨客の世界なのです。


※御成約済みです。


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