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【仁阿弥道八 雲鶴模 茶碗】 共箱・九代極め外箱・鵬雲斎玄室箱 [幕末京焼]

マルチな才能を見せた『仁阿弥道八』なので、代表的な作風といわれますと・・・種々、頭に浮かびます。

そんな中、有名ではあるものの・・・数としては少ない部類に入りますのが『雲鶴青磁』です。


個人的に、幕末の名工たちの『雲鶴青磁』写しのお茶碗というのが好きなもので、なにかしら・・・ちょくちょく取り扱っておりますが、仁阿弥では(水指以外で)『お初』となります☆



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【仁阿弥道八 雲鶴模 茶碗】


幅    11.1cm

高さ   10.2cm

高台径   6.8cm


製作年代  文政9(1826)~天保13(1842)頃

箱    共箱  九代道八極め外箱  鵬雲斎玄室 書付




『雲鶴青磁』、は『高麗青磁』の一種です。


中国の青磁に影響を受け、製作が始まった朝鮮半島の青磁ですが、長い歴史の中で様々な変化もあったようです。

そんな中、12世紀に高麗青磁の中でも高級品とされた、『象嵌』を施したものが生み出されます。


本来、形状の他は単色の色合いだけを見どころとする『青磁』ですが、白土と赤土を象嵌することにより、意匠を施すことで新たな魅力を求めたのです。


室町時代(1336~1573年)に日本に伝世した、元は単なる『器』であったものを『お茶碗』に見立てて珍重したところから知れ渡ったようです。


ぐるっと、作品を見回してみましょう。


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火の当たり、により色合いの変化も起こります。


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澄んだ『青色』に、上釉の透明釉の大きな貫入、というのは雲鶴青磁の特徴であり、忠実に再現しております。


寸法をご覧頂くと、おや?と思われますが・・・縦より横の方が長いのです。

筒形であることでの目の錯覚です。


ちなみに、このサイズは『京都国立博物館』に所蔵されております『高麗象嵌茶碗』と同寸です。


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口造りは、胴以下に対して薄く仕上げております。


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仁阿弥の『雲鶴青磁』作品は、水指でも銘は底面ではなく、側面に施されます。

そして、それらも『象嵌』でされるのが特徴です。



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2つ、印があります。


『御室土賜造』 『道八』


この、前者の印はかなり希少です。


仁阿弥は、その力量と、作行きの雅風から様々な寺院や宮家、各地の有力者からの評価が高く常に注文が絶えませんでした。

仁阿の号、は文政9(1826)年に44歳の時に御室の『仁和寺宮』より、『法橋』に叙せられた際に賜ったものです。

(同時期に、醍醐寺三宝院宮より『阿弥』号を許される。『仁阿弥』の誕生です。)


その縁で、京焼の祖ともいうべき『野々村仁清』ゆかりの『御室の土』を仁和寺より特別に拝領することが出来ました。

その土を使用した作品のみに、使用される印で現存確認されるものでもかなり希少なのです。

年代特定出来る作品として、東京国立博物館所蔵の水指が文政12(1829)年作として存在しますが、数の少なさからおそらくは継続的に賜っていた土では無いと思われ、仁阿の号を賜った際に得た土を大事に使って、少数製作していたものなのでしょう。


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同時期の国焼きの雲鶴青磁の特徴として・・・『白土』による象嵌は、ありますが『赤土』の象嵌は無く・・・代わりに、『染付』で同じ個所に色を付けるようになっております。

これは、高麗の権威の先生にお聞きしたところ、この頃に技術的に赤土の象嵌発色が出来なかったのでは、とのことです。

確かに、高コストをかけていた『尾張徳川藩窯』である『御深井焼』での高麗青磁写しでも同様の特徴があります。


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2重箱です。

外箱に、九代高橋道八の極めがございます。



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仁阿弥時代の、共箱です。


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数年前の鵬雲斎大宗匠(玄室)の箱書きが付随します。

かなりのご高齢ですが、堂々とした筆です。



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幕末の京焼では、『永楽保全』『眞葛長造』も雲鶴青磁に挑戦されており、それぞれの発色の特徴があります。

仁阿弥のは、いわば・・・『クール』な雲鶴青磁とでもいいましょうか。

澄んだ発色とシュッとした形状が合わさっていることで独自の特徴が生まれるのです。


京焼の伝統・文化は『写し』です。

それは、単なるコピーではなく・・・その時代の背景や技術、それぞれの陶工の知性とセンス、がミクスチャーされることで、再構築される、その時の『最先端』の現れ、なのです。


※御成約済みです。


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